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佐高信さんが好きな「ミッドナイト・ジャーナル」

さたか・まこと 45年生まれ。経済評論家。著書に『電力と国家』など。近刊に共著『国権と民権』。

闇の中にある真実に迫る記者

 今年4月に出て直木賞候補になった、この著者の『傍流の記者』を読んだんです。新聞記者の群像を描いた作品。「主流には与(くみ)しない。長いものには巻かれないで踏みとどまる」という強い思いを感じた。それで、著者の過去の作品を読んでみた。共感したのが、この本です。

 やはり新聞記者が主人公。7年前に児童誘拐事件で大誤報を打って地方支局に飛ばされた記者の赴任先で、女児連れ去り未遂事件が起こる。7年前の事件との関連を疑った記者たちが、過酷な取材に挑む物語です。

 「情報」というものの深みを教えてもらったと思いました。記者たちは刑事に夜討ち朝駆けしても無視される。話ができるようになっても、核心部分は教えてもらえない。それでも気力と体力を振り絞り、最後は刑事から情報を取ってくる。

 私は常々「情報化社会? 何を言ってやがんだ。本当の情報はクリックすれば出てくるもんじゃないんだ」と感じていたから、ピタッときた。「真実というのは常に闇の中にある」という台詞(せりふ)に、上っ面の情報にだまされてはいけないという思いも強くなった。

 職業柄、堅い本を読むことが多いのですが、それでは心の「栄養」が偏る。糖分が欲しいなと思ったとき、小説で魅力的な人間に会いたい。それを満たしてくれた一冊です。(聞き手・西秀治、写真・横関一浩) =朝日新聞2018年11月3日掲載