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新書ピックアップ(朝日新聞2018年11月10日掲載)

『凶暴老人』 

 副題は〈認知科学が解明する「老い」の正体〉。ギョッとするようなタイトルとは裏腹に、認知科学の専門家が実証実験をもとに「老い」の正体を解き明かす。加齢でどんな認知の変化が生じるか、高齢者の認知の弱点は何か、なぜ怒りやすくなる人がいるのか、どうすれば認知能力を高く保てるか、幸せな高齢期を過ごすコツなどについて、研究に基づいた最新の知見を紹介する。
★川合伸幸著 小学館新書・842円

『平成論』

 来年4月30日に「平成」が終わる。東西冷戦の終結、オウム真理教による地下鉄サリン事件、9・11米同時多発テロ、3・11東日本大震災……。この30年を「宗教と社会」をキーワードに東工大リベラルアーツ研究教育院の教授4人が読み解く。生きづらさの中でのスピリチュアリティーへの関心や、仏教の可能性など、この時代の精神史が浮かびあがる。
★池上彰・上田紀行・中島岳志・弓山達也著 NHK出版新書・842円

『薬物依存症』 

 薬物依存症の治療と研究を専門とする精神科医が、覚醒剤、睡眠薬・抗不安薬、危険ドラッグなどの依存症について、基礎知識から独自の再発防止プログラム、最新の保健政策までを紹介。「ダメ。ゼッタイ。」といった規制強化の限界、依存症患者にまつわる様々な負のイメージの誤解を解く。治療と回復支援を軸とした、社会的包摂の重要性を訴える。
★松本俊彦著 ちくま新書・1058円

『人生の十か条』

 在仏の作家・ミュージシャンの著者が、離婚後、息子を育てながら、人生のさまざまな局面打開のため、ツイッターで発信してきた十か条をもとに、幸運や人間関係などテーマごとにまとめた。諦めの大切さや日々の感謝など、当たり前のことの意識化の一方、「迷った時に心がける十の決断」では「清水の舞台から飛び降りたら死ぬ」など意表をつくひとことも。著者と息子の二人暮らしの日常の風景が伝わってくる。
★辻仁成著 中公新書ラクレ・886円