「石」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、道端や川べりに転がっている、なんの変哲も
ない灰色の石。ところが、「不思議で美しい石の図鑑」に登場する石たちは、そんなイメ
ージとはかけ離れ、まるで絵画のように色とりどりです。
本書は、著者で瑪瑙(めのう)コレクターとして知られる山田英春さんのコレクション
から約380点を収載。原石の切断面に広がる複雑で美しい模様を通して、瑪瑙やジャスパ
ー、孔雀石などの鉱物や岩石を紹介しています。
石の模様は、熱や圧力、溶解、冷却などさまざまな作用によって生まれているとのこと
。これらの模様は、何千年、何万年、あるいはそれ以上の歳月をかけて地球がつくりあげ
てきたもので、色も形も一つとして同じものはありません。
中でも自然の不思議な力を感じるのが「風景石」と呼ばれるもの。石の断面に、山々が
連なっていたり、海が広がっていたりと、まるで誰かが描いたかのような風景画が見えま
す。風景石は古くから珍重され、16〜17世紀にはヨーロッパの王侯貴族の間で流行り、時
にはその模様の成り立ちを巡って学者たちの議論の対象にもなったのだとか。
石の模様は、地球の生命活動の記録の一つ。「地球は生きている」ということを改めて
実感させられます。本書で美しい石の模様を愛でながら、地球に思いを馳せてみてはいか
がでしょうか?