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31文字の和歌、男女の思いのせ 小林一彦さん「恋歌 王朝の貴族たち」

小林一彦・京都産業大学教授=京都市北区

 平安時代、気になる女性のうわさを聞いた男性は、和歌を書き付けてメッセンジャーの少年に持たせ、女性に届けた。女性は少年を待たせて返事の歌を作り、持ち帰らせた。男女の思いをのせて京の都を飛び交う31文字の和歌は、現代のショートメールのようだ。著名な歌人らのそんな恋の歌を紹介する本「恋歌(れんか) 王朝の貴族たち」(さくら舎)を刊行した。
 「和歌の家」冷泉(れいぜい)家に伝わる貴重な古典籍を写真複製した「冷泉家時雨(しぐれ)亭叢書(そうしょ)」の刊行に、編集委員として携わった。「王朝歌人たちが詠んで間もない時期の歌集を手に取ることができ、彼らの肉声に触れた思いがした」という。その声を今を生きる人たち、特に若い世代に届けたいという思いから、新聞で2年間、平安歌人らの歌を読み解く連載を手がけ、今回の本にまとめた。
 藤原道長に「遊んでる女」と呼ばれ、「あなたに言われる筋合いはない」と歌で返した和泉式部。勝ち気なようで、男性を思って涙する歌を残した清少納言。「短いメールの文言で思いを伝え合う現代人にこそ、彼女たちの思いは伝わるのでは」(編集委員・今井邦彦)=朝日新聞2018年11月7日掲載