「ハートウッドホテル ねずみのモナと秘密のドア」
両親が残してくれたたった一つの形見、ハートが彫られたクルミのからのカバンをにぎりしめ、嵐の中でネズミのモナが見つけたのは、同じハートのマークを持つハートウッドホテルでした。行く当てもないモナは、ハートウッドホテルでメイドとして働くことに。気持ちを言葉にすること、時には、相手にどう思われてもきちんと自分の意見を言うこと。ホテルに身を寄せる様々な動物たちとのかかわりを通して、孤独だったモナは他者と生きていくすべを学んでいきます。子どもたちが誰でも抱える悩みや戸惑いを小さなモナが勇気をもって克服していく様はきっと読者も共感できるでしょう。細かく描かれたホテルのこだわりの内装もわくわくします。(丸善丸の内本店 児童書担当 兼森理恵さん)
「なんげえはなしっこしかへがな」
「長い話をしてやろうかな」と津軽弁で語り出す、果てなし昔話集。実際の一話ずつは短いが、カラスが鳴く度に何万もの栗の実がひとつずつ落ちる話だったり、長い長い蛇が歳月かけて山越えする話だったり。おおらかな語りと絵から、ゆっくりおかしみがわいてくる。なかなか寝つかずお話をせがむ子どもたちへ。方言はどうぞ自己流で。(絵本評論家・作家 広松由希子さん)
「まめつぶこぞうパトゥフェ スペイン・カタルーニャのむかしばなし」
パトゥフェは、豆粒くらい小さいけれど、なんでもやろうとする男の子。踏みつぶされないように「パタン パティン パトン」と歌ってみんなの注意を引きながら歩いていく。ところが、お父さんにお弁当を届けにいく途中、牛に食べられてしまったから、さあ大変。ゆかいで楽しい絵本。(翻訳家 さくまゆみこさん)=朝日新聞2018年12月29日掲載