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「ハガレン」のエドとアルに自身の兄弟愛を重ねて 男子ホッケー・大橋雅貴さん(前編)

文:福アニー、写真:有村蓮

楽しむ気持ちを忘れずに人一倍努力する

――『鋼の錬金術師』の連載開始は2001年。大橋さんが小学生の頃ですが、いつ、どんなきっかけで読み始めたんですか?

 2コ上の兄が家で読んでて、その影響で気づいたら読んでましたね。何歳で読み始めたか、そのときに何巻まで出てたかっていうのは全然覚えてないです(笑)。主人公のエドとアルを兄と自分に重ね合わせて読んで、親近感が湧いてハマっていったと思います。兄弟で旅するのはもちろん、錬金術を使って物事が解決していくところも好きですね。ものを生成するときは魔法のようでワクワクしたし、子供心をくすぐられました。

――兄・エドと弟・アルのどういったところに共感しました?

 自分は「弟」という立場なので、漫画のなかでも弟が兄をしっかりサポートしてあげてるのがいいなと。兄は自分よりできることも多いし優れてるし、偉大だと思ってるんですけど、その手助けをしながら二人で力を合わせてやっていくっていうところにすごい魅かれました。

――エドは意志が強く突き抜けるタイプ、アルは穏やかに包み込む感じと対照的ですよね。ご自身はどちらに似ていると思いますか。

 どちらかというとアルかな。でもどうなんですかね、それは場合によって変わるかもしれません。二人ともなりふり構わず進んで行くというよりは、どちらかが暴走しそうになったらどちらかがおさえて、一歩下がって見守る感じになると思います。

――これはスポーツに通じるというような、心に残るセリフや好きなシーンはありますか?

 第1巻2話の「何かを得ようとするならそれなりの代価を払わなければいけない」「兄さんも『天才』だなんて言われてるけど『努力』という代価を払ったからこそ今の兄さんがあるんだ」です。兄もホッケーをしていたんですが、途中から勉学の道に進んだので、勉強にも熱心に取り組んでいて。それで特待生で大学に行ったんですけど、そのとき兄もがんばったから代価を得たと思うんです。

 自分はホッケーばかりですが相当努力をしてましたし、年代別のすべての日本代表に選ばれました。「楽しむ気持ちを忘れずに人一倍努力する」のが好きで、それで競技力を上げていったところがあります。そういう代価を払ったからこそ、いまの自分があるのかなと思いますね。

「鋼の錬金術師」1巻P75より ©荒川弘/スクウェア・エニックス
「鋼の錬金術師」1巻P75より ©荒川弘/スクウェア・エニックス

――ほかにも印象的なセリフってあります?

 第3巻10話にある「何かに一生懸命になれるって事はそれ自体が才能だと思う」ですかね。子供時代を振り返ると、もちろん遊んでもいましたけど、一番なにをしたかって言われたらホッケーを一生懸命してたので。ホッケーも兄の影響で7歳から始めていま25歳なので、18年くらいやってますね。

一生懸命がんばる姿勢に共感

――兄弟の物語ということで二人の絆や信頼、愛情も描かれていますが、どんな場面が好きですか?

 旅をするなかでしっかり弟が兄についていく、そういう場面がすべて好きですね。自分も小さい頃に、兄や兄の友達にずっとくっついて歩いて遊んでもらってたので。一緒に自転車を漕いで遊びに行くのが冒険のようでした。みんなホッケーをやってたので、部活も遊ぶときも一緒でしたね。兄の友達もいい人ばかりで、みんな仲良くて居心地がよかったです。いまは兄と一緒に暮らしてないので遊ぶことは減ったんですけど、会えばよく話しますし、兄に対するリスペクトはありますね。

――そもそも物語は錬金術最大の禁忌・人体錬成を行ってしまったところから始まりますが、覚悟を決めてタブーを犯した兄弟の気持ちもわかりますか?

 わかります。もちろんスポーツはルールに則って行うものなので、スポーツマンシップに反したり悪質な行為をしたりするのは絶対によくないのですが、ファールはタブーではなく戦術や技術の一環。なにかの目的に向かって一生懸命にやっていく姿勢は大切かなと思います。

――実のお母さんやキメラにされたニーナを救えなかったという挫折と後悔がエドの根底にはあると思いますが、それを力に変えるというのはスポーツも同じでは。

 挫折とは違うかもしれませんが、大学2年生の時に足を疲労骨折してしまったんです。2カ月くらいホッケーができずに松葉杖で生活してたんですけど、当たり前にやってたホッケーができないのがすごい悔しくて。健康であることにもっと感謝しなくちゃいけないと思って、怪我が治ってからはより熱心に取り組むようになりました。

――エドは「元の体を取り戻すため軍の狗として生きる」と覚悟を決めたり、宗教や政治思想や権力なんて知ったこっちゃないというスタンスだったり、かなり我が道を行くキャラクターですが、シンパシーを感じるところはありますか?

 昔は政治とか宗教とか全然わからずに、ただ主人公のことについて読み進めてたんですけど、なりふり構わず進んでくってスタンスは好きですね。実際スポーツの世界で全部を無視してっていうのは難しいことですけど、自分の欲しいものを手に入れるために一生懸命がんばる姿勢は好感が持てます。

もしも錬金術が使えたら…

――ほかの漫画や本もよく読まれますか?

 漫画はよく読みます。『SLAM DUNK』に『ドラゴンボール』、『ONE PIECE』…ジャンプ系はいっぱいあります。ジャンルもファンタジーからスポーツまで幅広く好きですね。遠征中はバス移動が多くて暇なので、本当は漫画を読みたいんですけど、かさばるので小説を持って行きます。でも途中で飽きちゃうんですよね(笑)。この取材が決まってから、『鋼の錬金術師』をまた一から読んで。

――改めて読んでみてどうでした?

 終わり方がすごいよかったなって、より強く思いましたね。子供の頃に読んだ時は、弟の体が復活してよかったと思いつつ、それと引き換えに錬金術という魔法のような力を捨てちゃうのはもったいないって正直思いました。でもこうして時間が経ってから読んでみると、錬金術を手放してまでも得るものがあったんだ、追い求めてきたものがあったんだって気持ちがすごいわかるというか。いい終わり方だったんだなと思います。変に長引くこともなく、簡潔に終わるのもいいですよね。

――『鋼の錬金術師』はゲームで有名なスクウェア・エニックスから出ていますが、ゲームもやりますか。

 兄と一緒にドラクエとかやって、わからないところを教えてもらってましたね。ポケモンもバージョン違うのを買って、交換したり対戦したりしてました。

――『鋼の錬金術師』にかけて、大橋さんが錬金術で錬成してみたいものってありますか?

 めっちゃ豪華な家を建てたいです! あと敷地内にホッケーコートも作る。そしたら練習場に行かなくても練習できますからね(笑)。

>後編「『自分のため』から『人のため』のホッケーへ」はこちら