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絵心から生まれる言葉や世界を想像してみよう 絵本作家・宮西達也さん@北海道・八雲養護学校

文:中津海麻子 写真:吉永考宏

 「おお、これはすごいな!」

 授業の会場になる体育館に足を踏み入れた絵本作家の宮西達也さんは、思わず感嘆の声を上げた。宮西さんの絵本約30冊がずらりと展示されており、その1冊1冊に手作りのPOPが飾られていたのだ。

 『きょうはなんてうんがいいんだろう』には「人生はあなたの行動次第なのかも」といった含蓄のあるコピーが、『オオカミグーのはずかしいひみつ』には、グーを育てたイタチのお母さんが身を挺してグーを守ったことに触れ、「宮西さんに聞きたい! お母さんは元気になったの?」という質問が添えられるなど、どれも個性的な力作ぞろい。

 これらのPOPを手がけたのは、北海道八雲養護学校の児童と生徒たち。同校では、神経筋疾患や重症心身障害などの小学生から高校生までが生活と学びを共にしている。

 そうこうしていると、電動車イスなどに乗った児童、生徒たちが続々と集まってきた。みんな宮西絵本の大ファンで、憧れの作家を前に緊張しながらもドキドキ、ワクワクの笑顔がこぼれる。宮西さんはあいさつもそこそこに「さぁ、読み聞かせをするよ!」。

 人気作『うんこ』『はらぺこヘビくん』を宮西さんが元気に読み上げると、会場は笑いに包まれ一気にテンションアップ。お兄ちゃんのマネばかりする妹のかわいくもおかしい姿を描く『まねしんぼう』を手にした宮西さんは、「僕には弟がいるんだ。ちっちゃい頃、弟が僕のマネばっかりしてた。その様子を絵本にしました」という制作秘話を披露した。

 ラストは、八雲のみんなが大好きだという『おまえうまそうだな』。乱暴者に見えるティラノサウルスが赤ちゃん恐竜相手に優しい気持ちが芽生えていく様を、宮西さんはときにユーモラスに、ときに優しい口調で読み上げた。

 盛り上がったところで、後半へ。全員参加のワークショップだ。

 「これから紙を配ります。好きな絵を自由に描いてみよう! まずは宮西さんがお手本を見せるね」

 そう言って、ノート大の段ボール紙に自らペンを握り、サラサラ。

 「はい、シッポが取れて悲しんでいるティラノだぞ~」

 おなじみの大好きなキャラクターが突然目の前に現れ、「生ティラノだ!」と声が上がった。

 さぁ、いよいよみんなの番。病気のため手に力が入りにくい子どももいるが、その分、腕全体を使って思い切り線を描く。自分でペンを握れない生徒は、担当の先生が介助しながら少しずつ仕上げていく。会場狭しとその様子を見て歩く宮西さん。

 「これは何?」と一人の生徒にたずねると「ウニです」。なんでも大好物なのだとか。さらにウニが空飛ぶ様子を描いている。「発想がユニーク。躍動感があって、いいなぁ」と宮西さんは感心しきり。生徒はちょっぴり誇らしげな表情を見せる。

 体育館まで移動できない生徒は、オンラインでつないだ映像を通して参加。宮西さんが「おーい、僕のこと見えるかい?」と画面に呼びかけると、「はーい」と手を振り返す。先生に手伝ってもらいながら生徒が描いたのは、ウサギ。「なんか顔についているけど……?」と宮西さんがたずねると「ウンチです」。宮西さんも周りで聞いていた生徒たちも、思わず爆笑だ。

 そして1時間後、ひねりの効いた作品がそろった。「完成した絵を切り取ろう!」と宮西さんの掛け声で、みんなはペンをハサミに持ち替え、丁寧に切り取って行く。その間に宮西さんが用意したのは、両手を広げたほどの大きな額。そこに、みんなの作品を所狭しと貼って行くと……色んなキャラクターがぎゅうぎゅうに詰まった1枚の絵に。「完成!」と宮西さんがパッと掲げると、「わぁ」「すごい!」と歓声が上がった。

完成した作品を見せて講評する宮西達也さん(個人情報保護のため、画像の一部を修正しています)

 同校は併設する病院の移転に伴い、来年には札幌に移ることが決まっている。仲間の力が一つになった大作に、「札幌に持って行こうよ!」「八雲の自慢になるね」と笑顔が弾ける。

 宮西さんは最後にこんな言葉を贈った。 

 「絵本って読む人の頭の中で絵を動かして楽しむもの。それが感性を豊かにします。同じように、みんなの絵が一つになって生まれたこの作品からも色々なことが見えてくるはず。ここから生まれる言葉、世界を想像し、君たちだけの物語を考えてみてください」 (ライター・中津海麻子、写真家・吉永考宏)

完成した作品(個人情報保護のため、画像の一部を修正しています)