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BLラバーの書店員もドキドキ♡ オフィスラブなBL作品3選

平凡な名前が引き寄せた、平凡じゃない恋(井上將利)

 3月。お仕事が期末を迎える方々など、何かとバタバタし始める時期ですね。かく言う私も仕事(BL)に追われ、ついつい仕事(BL)の事ばかり考えてしまう今日この頃です(笑)

 そんなこんなで今回は職場を舞台に繰り広げられるBLをご紹介。「ハートの鍵を手に入れろ!」(ジュリアンパブリッシング)は2013年に発売された三月えみさんの初コミックス作品。

©三月えみ / ジュリアンパブリッシング

 本作の主人公は鈴木太郎。まるで役所の見本のような平凡極まりない名前にコンプレックスを感じる25歳。そんな彼が転職を機に引っ越した矢先、前の住人と名乗る泥酔した男が合鍵を返しに訪れたと思いきや、「スズキ?」と太郎の顔を見た途端泣き出して!?

 どうやら“スズキ”違いで誰かと間違えられたと悟った太郎は自分の平凡な名前を自虐するも、その酔っ払いの「君はこの世にたった一人だろう」という言葉に思わず救われるのでした……。

 そして後日、太郎が新しい職場に出社するとそこには何故かあの男が。

 志賀凌太と名乗るその男はなんと太郎の上司! しかも最近、鈴木という女性に振られたということらしく、色々と合点がいく太郎。ところが、その女性は太郎の姉“鈴木桜子”という仰天事実が発覚して……。

 自分を救ってくれた男は自分の姉に振られた男でした。

 その事実を知り、せめて自分が志賀を励まそうとお節介を焼く太郎。志賀はそんな太郎に桜子の姿を重ねてしまう事に苦しみながら、それでも少し救われるのでした。

 そして時には仕事で落ち込む太郎を励まそうと優しさを見せる志賀は徐々に自分の中で太郎の存在が大きくなっていることに気付き、一方の太郎も志賀に対する気持ちの変化を感じ始めるのでした。

 ところが、そのまま二人の距離が縮まって……とはならない本作。それぞれが自分の抱く愛情がどこへ向かうのかを自覚しつつ、それでもあえて否定し拒絶し、歯痒いほどにすれ違っていきます。

 自分が相手に何を求め、何を伝えたいのか、自分の気持ちに正直に向き合おうとする二人の迫力を是非感じ取ってください。恋も仕事も一生懸命な男たちの魅力がぎゅっと凝縮された1冊です!

アラフォー&アラフィフ男のオトナな恋の駆け引きにグッとくる!(キヅイタラ・フダンシー)

 同じ職場で繰り広げられる恋……。いろいろ妄想しちゃって楽しいですよね(笑)。今回そんなテーマにておすすめする1冊はこちら。

 西田 ヒガシさん「まだ愛が足りない」(リブレ)

 主人公は仕事もできて部下からの信頼も厚いイケメン営業・北原と、男らしくて上司にしたいって感じの人事部部長・井上。ある日、井上のもとに北原のセクハラ行為を告発する文書が届きます。もともと同じ課の上司と部下の関係だった二人なのですが、セクハラについて話してもソツのない対応をする北原に、井上は何か違和感を覚えて……、という形でスタートする物語。

 実は北原は金とテクニックで男を虜にするプレイボーイなのですが、愛が足りないと自覚している様子。井上のことを無性に手に入れたいと思うようになり、アプローチを掛けていきます。井上も北原の魅力をだんだんと意識しはじめますが、そんな簡単にことは進まないのがこの作品の面白いところです。

©Higashi Nishida/libre 2012

 北原は恋多き男が故に、相手を深く知り、想うことがわからない。井上も離婚したばかりで、娘や別れた妻がいて、しかも男性経験もない。年を重ねることで蓄積される男としてのプライドや価値観を持ち、すれ違いながらも思い悩む二人のやり取りは、“キュンキュン”というよりも“グッ”とくる駆け引きで、「この恋路どうなるの~!?」とハフハフしちゃいます。

 あと、わりとおちゃらけた感じを装う北原の、ここぞというときの表情がいいんです。特に目がすごい! 視線に射抜かれちゃいそう(笑)。西田さんの描く男性キャラクターは良い意味でBLっぽくないというか、ありえないくらいハイスペックでもないし、リアルなオジサンらしさがあったりするのですが、人物としてすごくかっこいいんですよね。

 ちょこちょこと散りばめられるコメディ要素もありつつ、クライマックスはドキドキを通り越しちゃうような展開が待っています……!「えーっ、社内でこんなことまでしちゃうー!?」と心の中で騒ぎながらも、ハッピーエンドが待っているので安心しました(笑)

 最後にちょっと未来の北原が部下に語るシーン、良きでした……。

人見知りサラリーマンのまったりラブ(貴腐人)

 今月のお題は「オフィスラブ」! BLでオフィスラブというワードをテーマとする事があまり無いのでお題をいただいた時は新鮮な気持ちになりました!

 で、肝心の作品ですが、倫敦巴里子(ろんどん・ぱりこ)さんの「運命ってことにしませんか?」(海王社)をご紹介。

 人見知りサラリーマンの悟嶋(ごとう)くんが先輩の頼みで頭数合わせの合コンで出会った無表情イケメンでおたくの藤原さん。無表情のままアニソンメドレーで合コンを盛り上げるだけ盛り上げて、誰とも電話番号交換をせず帰っちゃう藤原さんは、悟嶋くんを上回るほどの超人見知り。そんな藤原さんが悟嶋くんにだけ興味を示し、電話番号を交換する……。これって「運命なのでは?」という事でお付き合いが始まりますが、二人の穏やか~な性格同様にまったりした雰囲気のまま。

「運命ってことにしませんか?」倫敦巴里子 ©PARIKO LONDON/KAIOHSHA

 趣味が合う、波長が合う、一緒にいてリラックスできる「同性」。それだけなら友達のままでいたほうがお互いのためでは? でも好きだから友情止まりでは終わりたくない。いろいろ「したいんだぞ」アピールしてるけど、分かりづらくて伝わらないもどかしさ。最後には悟嶋くんが詰め寄ってオトナの関係に……♡

 二人のまったり感のせいか、淡白な作品かな?と思いきや、奥に潜む熱量があります。悟嶋くんも熱量があるけど、やっぱり藤原さんの熱量でしょう!

 なんせ藤原さんが表情を変えるのは、好きなテレビ番組や映画の話題の時か、悟嶋くんに触れている時だけ。藤原さん、ヘンなところで分かりやすいです。
 きっとこの先もまったりもだもだしながらお付き合いするんだろな~とほっこりする読後です。

 作中に登場する「アニマル戦隊 サバンガイン」「世界の車載カメラから」「ふり向けばトミエ」シリーズ。見てみたいです。