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「超孤独死社会」書評 年間3万人の死の裏側に迫る

評者: 黒沢大陸 / 朝⽇新聞掲載:2019年05月04日
超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる 著者:菅野久美子 出版社:毎日新聞出版 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784620325767
発売⽇: 2019/03/25
サイズ: 19cm/284p

超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる [著]菅野久美子

 迫る臨場感は、丹念な取材や書きぶりばかりでなく、いつ自分が直面しても、いつか自分が孤独死しても不思議ではないからだろう。特殊清掃の現場から見える故人や周辺の人々の生きてきた姿。この時代の身近で暗い側面が浮かぶ。
 特殊清掃とは、遺体発見が遅れて腐敗が進み、損傷した部屋の原状回復などをする業務。猛烈な臭いで気づいた近隣住民や大家らの出動依頼で駆けつける。ゴミ屋敷状態で、畳から床まで染みている体液。100万円を超えることもある費用。請求される遺族が遠縁のことも。切実な実態だ。
 孤独死は年間3万人に達するという。自分たちの近隣にもゴミ屋敷はあり、家を探せば妙に安い物件もある。孤独死しかねない人も思い浮かべられるだろう。我々が作ってきた社会だ。
 ハイテク利用の見守り、第三者が支援するレンタル家族、孤独死保険、対応策も紹介される。特効薬はない。この現実を見つめたい。