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発見の驚きとゆかいが満載

「ナマコ天国」

 目も耳も鼻もなく、心臓もなければ脳もない。ナマコはナイナイ尽くしの生物だ。こすると溶けてしまうけど、数週間で元通り。まっぷたつにされても、2匹になるだけ。うーん、これでも生物?
 「ゾウの時間ネズミの時間」で知られる作者は、実はナマコが専門の生物学者。巻末の楽譜にも、ナマコの底知れぬ魅力のエッセンスがつまっている。逃げも隠れも戦いもせず、砂を食べてウンコするナマコ。そのシンプルな生き方を理想とする画家の絵には、大胆なナマコ愛があふれている。自分と異なる「ヘン」な生き方を知り、敬うことの大切さが、本書の隠しメッセージだ。役立つ知識より、発見の驚きやものの見方をゆかいに伝える、これぞ科学絵本。(絵本評論家・作家 広松由希子さん)

「あしたはきっと」

 茶色い肌の子どもが主人公の「おやすみなさい」の絵本。「あしたはきっと」という言葉に続いて、子どもの日常を彩る青空や、おいしい食べ物や、だれかの歌声が出てきたかと思うと、だんだん想像がワイルドになって、クジラに乗ったり、「へんちくりんなやつ」を見つけたり、笛を吹きながらカタツムリを散歩させているおじさんに会ったりもする。今日がつらかった子どもにも、明日はきっと素敵なことや不思議なことがありそうと思わせてくれるのがいい。寝る前に読んでも、読んでもらっても、楽しいよ。(翻訳家 さくまゆみこさん)

「エジソン ネズミの海底大冒険」

 本屋の本棚のうしろにネズミの大学があり、そこでは若い頃、知識を求めてどこへでも冒険に出かけた老教授が教えていた。そこへ子ネズミのピートがやってきて先祖がのこした宝をさがしてほしいと願い出る。ピートの熱意と教授の探求心のおかげで、大西洋の海に沈んだ宝のありかを2匹はつきとめる。このネズミの海底大冒険と発明家エジソンがどうつながるのかを考えるのは楽しく、またスクリーンのような絵の構成が魅力的で、何度でも開いてみたくなる絵本。(ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん)=朝日新聞2019年6月29日掲載