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映画「ダイナー」に出演の玉城ティナさん 「殺されても良いくらいの気持ちで臨んだ」

文:小沼理、写真:有村蓮

蜷川映画のヒロインはその時代の女の子像を表す

 胃袋を刺激する食事風景とグロテスクな殺し合いが同居しながら、怒涛のストーリーが展開する平山夢明さんの小説『ダイナー』。多くのファンを魅了しつつも、凄惨なシーンの多さと描写の緻密さから「映像化は不可能」と言われていた作品だ。その実写化に挑んだのは、写真家・映画監督の蜷川実花さん。原作を蜷川流に再構成し、「さくらん」「ヘルタースケルター」で見せた絢爛な映像表現で味付け。狂気的で美しい、エンターテインメント作品に仕上げた。

 蜷川監督がそのヒロイン、オオバカナコ役に指名したのが玉城ティナさんだ。オファーを受けた心境を、玉城さんはこう語る。「『さくらん』では土屋アンナさん、『ヘルタースケルター』では沢尻エリカさん。蜷川監督が撮る映画のヒロインはその時代の女の子像をあらわしていると思っていたので、2019年の今、私を選んでくれたことはただただ光栄です」

 蜷川監督とはデビュー直後の14歳からの付き合いだが、映画制作でタッグを組むのはこれが初めて。蜷川監督は「ティナとなら心中しても良い」と公言するほど、玉城さんの存在に入れ込んでいる。「そんなに強い言葉、プライベートでも言われたことがないです。蜷川さんから直接言っていただくこともありますが、そのたびに覚悟を決め直しています。一方、現場ではその言葉に助けられたことも。それだけ信頼されていることが心強くて、安心して撮影に臨めたとも思いますね」

©2019 「Diner ダイナー」製作委員会

 映画は派手なアクションシーンも見どころ。キュートなウェイトレス姿に身を包みながら、ハードな撮影にも挑戦した。「体を叩きつけられたり、押しつけられたりするシーンも多かったんです。ボンベロ役の藤原竜也さんをはじめ、殺し屋を演じた皆さんもすごい気迫。蜷川さんが心中しても良いと言ってくれているんだから、私は『殺されても良い』くらいの気持ちで頑張りました」

衝撃を受けた原作と、役作りではあえて距離を置いた

 映画化のために様々な脚色がなされた本作だが、玉城さんが演じたオオバカナコも大きくデフォルメされた。原作のカナコは肝の据わった人物だが、映画版のカナコは無垢で事態に翻弄されることの多い性格。玉城さんに合わせるように、年齢も30歳から20代に引き下げられた。「映画版の『ダイナー』は、原作を新しく再構築した作品だと思っています。カナコの芯の強さ、『そこでそんな発言をするんだ!』という挑戦的な部分は引き継ぎながら、物事に受け身で弱さもある役を目指しました」

 「平山夢明さんの原作を読んだ時の感情が私にとって初体験で、その気持ちで脚本を頂いたら、またぶっ壊されて」。「ダイナー」への出演が発表された日、玉城さんは自身のTwitterに興奮をそう書き綴った。「平山さんの小説は、私が普段読んでいる小説とはまったく違っていました。殺し屋の残酷さとおいしい食事という、相反するようでどことなく通ずるテーマが共存していて、別世界に行ったような衝撃を受けましたね。分厚い本でしたが、文章の強さに圧倒されてすぐ読み切ってしまいました」

 作品に出演する時は、原作があれば必ず読むという。「役を噛み砕くのが自分のやるべきことだと思うので。読まない方もいると思いますが、私は読んだ上で、どっぷり浸かるのか、あまり関与しないのかを決めています」

 カナコを演じるうえでは、原作と距離を置くことを選んだ。「答えは脚本の中にあると感じたんです。この中に正解が詰まっていると思ったので、脚本を何度も読み返して役を作っていきました」

玉城さんと映画版カナコ、2人がシンクロする理由

 カナコのようにウェイトレスとして働くことに興味はありますか? という質問には「絶対無理です。運んでいる時にこぼすので」と笑って首を振る玉城さん。しかしその心情にはぴたりと寄り添う。「カナコは自分の居場所が見つからなくて、存在理由に悩んでいる女の子。私もそんな気持ちになることがあるし、今の時代、誰しも抱える問題だと思います」

 玉城さんとカナコがシンクロするのには理由がある。映画のカナコは、蜷川監督が玉城さんに当て書きして作られたからだ。「脚本段階で蜷川監督と二人で話す時間を設けてもらって、私自身のことを色々お話ししました。そのお話と原作のカナコを蜷川監督の頭の中で混ぜて、映画のカナコができあがったんです。完成した脚本を読んだ時、『私ってこんなに寂しそうかな?』と思ったんですけど(笑)、私のパーソナルな面が反映されている部分もあると感じます。それがどんなところかは……ふふ、映画を見て探してみてください」

物語にのめり込みすぎないよう、読書はやることの合間に

 そんな玉城さんだが、私生活では読書家な一面も。「普段好んで読むのは江國香織さん、窪美澄さん、島本理生さん、吉本ばななさんといった女性作家さんたち。文体はやわらかいけどハードな世界を描いているような、光と影が共存している作品が好きですね」

 本を読むのは移動中や、外出先が多いと話す。「自宅で読むと、物語にのめり込みすぎて、部屋の中がその物語で満たされているような気持ちになってしまうんです。気持ちを持っていかれすぎないよう、やることの合間に読むようにしています」

 玉城さんが最近読んでいるのはミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』。20歳の時に発売した写真集『渇望』に小説を寄稿してくれた島本理生さんがおすすめしてくれたものだという。「まだ読んでいる途中ですが、決断を迫られる男の人の姿が印象的です。私が優柔不断だからすすめてくれたのかな(笑)。本は人からすすめられて手に取ることもあれば、自分で本屋さんに行って買うこともあります。持ち歩きやすいようになるべく文庫本を買っていますが、自宅の本棚を見てみるとハードカバーの本もたくさん。ただ、電子書籍はあまり使いません。紙の本が好きなんです。重みやめくるときの感触が良いし、装丁も含めて一つの作品として楽しみたいなって思います」

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