不穏だけど能動的。咄嗟(とっさ)に「ならば、パソコンの整理はしておきたい」などと考えてしまう“自分ごと感”もある。引き寄せられるタイトルだ。
映画宣伝会社に勤める本奈多子(ほんなさわこ)、42歳。関係各所の調整に同僚のフォローと激務をこなし、独り暮らしのマンションへ。その夜、激しい動悸(どうき)の後、身体が冷たくなって……。
本作には女性が抱える切実な悩みがモグラ叩(たた)きの勢いで立ち現れる。心身の変調、老後のお金、働き方の変化etc。積みあげてきたはずの知識や経験も揺らぎ、急に悲観的になったり、短気になったり。
一方、大学生の娘を持つ小宮塔子は夫の単身赴任を機にパートを始め、自分の身をもって年を重ねたことを実感していた。そんな時、思い出すのは同級生の多子のこと。
対極的ではあるが、どこか満たされない想いを抱えた2人の日常がリアルで引き込まれる。まだ社会にかたどられる前に出会った2人。今後、どんな影響を与え合うのか興味は尽きない。
文字にするとシリアスだが、著者ならではのユーモアが物語に軽みを与えている。人はそれぞれ自分にしか味わえない人生を歩んでいる。その事実を肯定してくれる柔らかな力強さが本作にはある。=朝日新聞2019年7月6日掲載
編集部一押し!
-
人気漫画家インタビュー 成田美名子さん「花よりも花の如く」完結記念インタビュー 運命に導かれるように「能」と向き合った24年間 横井周子
-
-
イベント 内田有美さん「おせち」が第1位に! 「大ピンチずかん」で人気の鈴木のりたけさんは3作がTOP10入り 第18回「MOE絵本屋さん大賞2025」贈賞式レポート 好書好日編集部
-
-
鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第34回) アトウッド、桐野夏生、エヴェレットに見るディストピアへの想像力 鴻巣友季子
-
一穂ミチの日々漫画 清野とおる「壇密」(第8回) 壇蜜っぽい怪異、壇蜜だもんねと納得 一穂ミチ
-
インタビュー アニメ映画「クスノキの番人」高橋文哉さん×天海祐希さん対談 東野圭吾作「人への温もりと大きな優しさ」 根津香菜子
-
本屋は生きている Bookstore & Gallery 出発点(東京) 書店主と編集者とバス運転手、目的地は「本をテーマに集える場」 朴順梨
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版
-
インタビュー 湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた PR by 双葉社
-
トピック 【プレゼント】第68回群像新人文学賞受賞! 綾木朱美さんのデビュー作「アザミ」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
トピック 【プレゼント】大迫力のアクション×国際謀略エンターテインメント! 砂川文次さん「ブレイクダウン」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
トピック 【プレゼント】柴崎友香さん話題作「帰れない探偵」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 今村翔吾さん×山崎怜奈さんのラジオ番組「言って聞かせて」 「DX格差」の松田雄馬さんと、AIと小説の未来を深掘り PR by 三省堂