本書はAIや5Gなど先端技術を巡る、アメリカと中国の覇権争いを描く。
中でも興味深いのは序章の自動運転開発最前線。中国・深圳のベンチャー企業に記者が密着取材した。社員平均年齢が28歳の新興企業が、政府系投資会社などから約120億円を調達し、創業から1年で「レベル4」と呼ばれる世界最高ランクに達する。
急成長を可能にしたのが「海亀(ハイグェイ)」と呼ばれる米国帰りの技術者たち。グーグルやテスラなどで経験を積んだ優秀な人材だが、背景には彼らの帰国を促し国内の発展に活(い)かそうとする中国の政策がある。記者は「アメリカで獲得した知的財産を盗み、活用しているのではないか」と疑うが、それは米国政府も同じだ。
このベンチャー企業にある日、まさかの事態が発生する。共同創業者の主導権争いで社内が分裂し、投資家が会社資産を凍結。資金がショートして同社は潰れてしまう。
脆弱(ぜいじゃく)な一面も覗(のぞ)かせる中国企業の実力を推し量るのは難しいが、米政権は「アメリカは、技術的な優位性を失い中国との戦いに敗れるかもしれない」とする報告書を公表。激しい貿易戦争の底流には、疑心暗鬼に陥った米国の過剰反応があるのかもしれない。=朝日新聞2019年7月20日掲載
編集部一押し!
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 ホラーはモキュメンタリーだけじゃない! 貴志祐介「さかさ星」など骨太な物語を味わえる3冊 朝宮運河
-
- みる 100%ORANGE「エルメスのえほん くるくるとステッチ」 鮮やかな職人技、そのままぎゅっと 最果タヒ
-
- インタビュー 「モモ(絵本版)」訳者・松永美穂さんインタビュー 名作の哲学的なエッセンスを丁寧に凝縮 大和田佳世
- 鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第19回) 翻訳が浮き彫りにする生の本質 小川哲、水村美苗、グレゴリー・ケズナジャットの小説を読む 鴻巣友季子
- トピック ポッドキャスト「好書好日 本好きの昼休み」が100回を迎えました! 好書好日編集部
- ニュース 読書の秋、9都市でイベント「BOOK MEETS NEXT」10月26日から 朝日新聞文化部
- インタビュー 寺地はるなさん「雫」インタビュー 中学の同級生4人の30年間を書いて見つけた「大人って自由」 PR by NHK出版
- トピック 【直筆サイン入り】待望のシリーズ第2巻「誰が勇者を殺したか 預言の章」好書好日メルマガ読者5名様にプレゼント PR by KADOKAWA
- 結城真一郎さん「難問の多い料理店」インタビュー ゴーストレストランで探偵業、「ひょっとしたら本当にあるかも」 PR by 集英社
- インタビュー 読みきかせで注意すべき著作権のポイントは? 絵本作家の上野与志さんインタビュー PR by 文字・活字文化推進機構
- インタビュー 崖っぷちボクサーの「狂気の挑戦」を切り取った9カ月 「一八〇秒の熱量」山本草介さん×米澤重隆さん対談 PR by 双葉社
- インタビュー 物語の主人公になりにくい仕事こそ描きたい 寺地はるなさん「こまどりたちが歌うなら」インタビュー PR by 集英社