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宮沢和史さん「島々百景」インタビュー 人の営み、「シマ」の音楽

宮沢和史さん

 『島々百景』と言うと、名曲「島唄」から、まず沖縄を思い浮かべるかもしれない。もちろん沖縄や奄美の島々も出てくる。でも、宮沢さんの「百景」には驚かされる。佐渡島、サハリン、バリ島、ポルトガルやブラジルの島々、ジャマイカ……。

 自身が旅をした島々だ。その地にまつわる歌の歌詞や由来、歴史を絡めて、音楽雑誌「月刊ラティーナ」に連載した39回分を本書に収めた。

 沖縄民謡の「白骨節(しらくちぶし)」は、恋人と海に身を投げたが、裏切られ、自分一人が白い骨になり砂浜でさらされている、という歌だ。そこから、沖縄を犠牲にして敗戦し、その後も置き去りにして発展する国、そこで不自由なく育った「自分という存在」にまで思いを巡らせる。沖縄戦で亡くなった人々を考えると「我々が生まれてきたことが奇跡的。僕は歌を通じ、こういう本を作るなどして、沖縄のことを理解してもらい戦争の無意味さを伝えていきたい」と言う。

 「島」や「沖縄」を「最大公約数的なイメージから解放したい」と思い連載を始めた。では、島とは何か。「色々な切り取り方ができるが、一つの宇宙の最小単位では」。アイランドとしての「島」というより、共同体としての「シマ」。意識したのは「島唄」という言葉を知ってから。奄美では「シマ唄」と書くことが多いという。そして、諸島でも一つ一つの島は異なり、距離的に遠いはずの島の間で共通性が見られることもある。「旅の面白いところ。形状としての島ではなく、そこに暮らす人たちの営みを書いた。そこから音楽が生まれてくるから」

 まだ書いていない島もたくさんあり、連載は続く。新たな島への旅もあるだろう。「あいつが来て、何か良かったなと思ってもらえる、その島に『昔から生えていた木』になれるような旅ができたらいい」(ラティーナ・2700円)(文・写真 神宮桃子)=朝日新聞2019年8月10日掲載