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「記者と国家」書評 権力の乱用に対する〝遺言〟

評者: 武田砂鉄 / 朝⽇新聞掲載:2019年10月05日
記者と国家 西山太吉の遺言 著者:西山太吉 出版社:岩波書店 ジャンル:外交・国際関係

ISBN: 9784000613552
発売⽇: 2019/08/08
サイズ: 20cm/152p

重要機密の厚いベールを前に、思いもかけず手にした極秘電信文は、返還交渉が偽装と隠蔽の産物であることを示す重要証拠だった…。国家の噓と対峙した第一線の政治記者、西山太吉の運…

記者と国家 西山太吉の遺言 [著]西山太吉

 ある国家機密に対し、「『国は守る』、『新聞は攻める』で、この間のバランスが微妙に成り立ってはじめて、民主主義は機能する」。もし、「攻める側の代表が守る側の代表を積極的に応援」したら、国は攻めも守りも自在に操れるようになる。
 沖縄返還目前の一九七二年、米軍用地の原状回復補修費にからむ密約をつかんだものの、機密漏洩教唆容疑で逮捕された政治記者西山太吉。事件の流れを振り返りながら、今の社会で放置されている権力の乱用に対し、「遺言」をぶつける。
 西山の警鐘は、基本的なことばかりだ。安倍首相による集団的自衛権行使に関する憲法解釈の変更は、民主主義社会ではクーデター的な措置ではないか。沖縄県内で基地を移転しても、政府の言う基地負担の軽減にならないのではないか。
 戦後政治の変遷に自身の体感を混ぜ込みつつ、鋭い言葉を現代社会に投げる。密約、虚偽表示、改竄を結果的に見過ごす姿勢に、立ち返るべき原点を指し示す。