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三代達也さん 「一度死んだ僕の、車いす世界一周」インタビュー 誰かを助けたい気持ちがバリアフリーになる

三代達也さん

 スイス、ギリシャ、インド、ペルー……2017~18年の9カ月間、車いすで23カ国約40都市を旅した。本書では、僕が出会った「世界共通のバリアフリー」は「人」と記す。

 18歳の時、バイクで車と衝突。頸髄(けいずい)を損傷、両手両足にまひが残り、車いすの生活に。身長190センチだが、車いすに乗ると130センチの視界になる。リハビリを始めた頃は「地獄のような日々。先行き真っ暗だ」と絶望したが、挑戦を重ねた。一人暮らし、車いすでの買い物、車いすバスケ、会社勤め、ハワイ一人旅……。「小さな積み重ねで行動範囲も広がっていきました。見える世界も違ってきた」と言う。「18歳で一度死んだ人生。どうせなら好きな旅を」と世界一周を決意。旅費約500万円は、貯金をあてた。

 旅行中はたびたび災難にも見舞われた。ローマの石畳はきつく、ガタガタと車いすの車輪に負荷がかかる。その後、訪れたフィレンツェで右の前輪が外れ、往生していると、イタリア人ファミリーたちが外れたネジを探し出し、工具を持ってきて修理してくれた。アテネのパルテノン神殿やペルーのマチュピチュでは男性2人が車いすを担いで階段や山道を進んでくれた。「バリアフリーの設備が整っていない場所もありますが、人が助けてくれて入れるようになる。誰かを助けたいという気持ちがバリアフリーになるのです」

 自身が車いすでまわった記録や各地のバリアフリー情報をネットで発信、車いすを使う人たちに役立てている。好きな言葉はハワイアンに伝わるという“No Rain, No Rainbow”。「大変なことも美しい虹を見るためには必要なプロセスなんです。今、心の中が土砂降りで落ち込んでいる人も、この先にいいことがあるんだと思えば気持ちが楽になるんじゃないかな」(文・写真 山根由起子)=朝日新聞2019年10月12日掲載