1. HOME
  2. ニュース
  3. 谷崎賞・村田喜代子さん、中公文芸賞・吉田修一さんが受賞あいさつ 都内で贈呈式

谷崎賞・村田喜代子さん、中公文芸賞・吉田修一さんが受賞あいさつ 都内で贈呈式

村田喜代子さん(左)と吉田修一さん

 今年の谷崎潤一郎賞・中央公論文芸賞の贈呈式が9日、都内で開かれた。『飛族』(文芸春秋)で谷崎賞を受けた村田喜代子さんと、『国宝』(朝日新聞出版)で中公文芸賞を受賞した吉田修一さんがそれぞれ執筆を振り返り、喜びを語った。

ないことは書かない 世の中不思議 村田さん

 『飛族』は国境近くの小さな島で2人きりで暮らす老女を幻想的に描いた。村田さんは「小説はいつも、ないことは書かない。あることばかり書いています。世の中はこんなに不思議に満ちているんです」と受賞のあいさつを始めた。取材では水上タクシーで島に近づいた。「そうっと拝見しました。訪ねてしまっては私の思いが飛ばないので、そうっとのぞいて、そうっと帰ってきました」。海女は80代でも海に潜ると聞き、驚いた。「お年寄りの姿とともに現代の日本を語れると思いました。書いていて毎日楽しかった」

歌舞伎の裏側へ 大きなチャレンジ 吉田さん

 吉田さんの『国宝』は、歌舞伎役者を主人公にした本紙朝刊の連載小説。「僕自身は何も持っていない。新しい世界に飛び込んで何か発見できたら」と歌舞伎の裏側に飛び込んだ。四代目中村鴈治郎さんに黒衣の衣装を作ってもらい、歌舞伎座から地方の小さな劇場まで、若い弟子らと一緒に舞台裏を走り回った。「得がたい経験で、楽しくてしょうがなかった。大きなチャレンジを認めていただき、勇気を与えられました」と話した。(中村真理子)=朝日新聞2019年10月23日掲載