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山田萌果さん「おぞましさと戯れる少女たち」インタビュー 自らの痛みや葛藤を表現

山田萌果さん

 2000年代以降、おぞましい姿の少女を描いた絵画が注目されるようになった。身体が溶け出したり、内臓が飛び出したり。幽霊や怪物として描かれることも。描いたのは主に女性画家たちだった。

 そうした表現を「少女たちの自己主張」という視点で論じた。「女性画家たちが、自分が少女の時期に味わった痛みや葛藤を絵にのせ、主体的に表現し始めた」とみる。

 「少女」を意識し始めたのは中学生の頃。少女の絵をよく描いた。しかし、「メディアから届くかわいくて従順な少女のイメージと、悩みや矛盾を抱えた自身とのギャップに苦しみました」。大学でフェミニズムやジェンダーの視点に触れ、苦しんだ経験を説明できるのではと考えた。

 本書では、少女のイメージを語ってきた多くの研究者や評論家たちに注目した。少女を「物体(オブジェ)」としてコレクションの対象に見立てた澁澤龍彦。女性の視点で「ひらひら」と漂う少女を論じ、80年代の少女論ブームのきっかけにもなった本田和子など。

 美術界では90年代以降、サブカル風の美少女アートが日本発の表現として、世界に広がった。しかし「主に男性によって描かれた『アニメ的』少女は、中身や内面が無くて、どれも入れ物のような受け身の存在だった」。

 それに対し、男性優位の社会の中で「少女期を経験した芸術家」たちは、自らの内面に抱える葛藤を、美的おぞましさとして表現した。そこに、「男性中心に作られてきた社会秩序を揺さぶる力がある」という。

 取り上げた「おぞましい少女」を描いた画家たちが、SNSで発信してくれた。言語化できなかった感覚が明確になったという感謝から、カウンセリングを受けている気分になったというものまで。彼女らには直接、会ったことがなかっただけに「うれしいとともに、ほっとした」。

 生まれ育った札幌で現在も書店員を続けながら、大学の非常勤講師を掛け持つ。「出版をきっかけに同世代のアーティストとのつながりが増えました。彼女らの作品も研究していきたい」(文・山盛英司 写真・山本倫子)=朝日新聞2026年3月14日掲載