「あの小説をたべたい」は、好書好日編集部が小説に登場するごはんやおやつを料理し、食べることで、その物語のエッセンスを取り込み、小説の世界観を皆さんと共有する記録です。
今回は、近藤史恵『タルト・タタンの夢』の世界へ。
下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルを舞台に、美味しい料理と謎解きが味わえる日常ミステリー。無精髭に長い髪を後ろで束ねた無口なシェフの三舟は変わり者ですが、腕は確か。料理と同じくらい謎解きも得意で、店にやってくる客たちが巻き込まれた事件や奇妙な出来事の数々を解決していきます。
「幸せ」を食べる
ある日、常連客のひとりで画廊オーナーの西田さんが婚約者を連れてビストロ・パ・マルを訪れます。婚約者は、プロメテウス少女歌劇団の北斗なつみ。宝塚のようなプロメテウス少女歌劇団で主役級の男役を務める人気者です。二人は終始和やかなムードで食事を楽しみ、西田さんは幸せいっぱいの様子。
そのおよそ2週間後、再び西田さんが仕事関係の人たちとお店にやってきますが、体調がすぐれないようで料理にほとんど手をつけません。話を聞いてみると、婚約者が腕を振るったフランス料理を食べすぎてお腹の具合が悪いとのこと。彼女の手料理にのろける西田さんですが、デザートには彼女がビストロ・パ・マルで食べて気に入ったタルト・タタンが出てきたという話に。その些細な会話から、西田さんが体調を崩したわけを三舟シェフが見抜きます。
タルト・タタンは、普通のタルトとは焼き方が違う。
型にキャラメリゼしたリンゴを敷き詰め、その上にタルト生地をかぶせてオーブンで焼くのがタルト・タタン。焼きあがったら、型をひっくり返してキャラメル色のリンゴ部分を上にして食べるものです。
今回は、このちょっと変わった作り方のタルトに挑戦してみました。ひっくり返すまで、どんな状態になっているのかがわからないので上手に焼けているかドキドキです。
“ひっくり返す”という工程のほかにも、作ってみないとわからないことがもう一つ。それがバターと砂糖の量。想像以上の量に、ひとくち食べるのもドキドキでした。