某ファストフードチェーンの白ヒゲおじさんのことではなく、車中泊で旅を楽しむための雑誌。語源はカー(車で)ネル(寝る)だろう。1年前から休刊していたが、版元が変わって復刊した。
車中泊にはオートキャンプも含まれるが、道の駅やサービスエリアなども積極的に利用して旅をするのが今ブームだ。ローカル線や路線バスなど地方の交通機関が次々と廃止になったりダイヤが削減されたりするなか、全国の隅々まで旅をするにはもはや車なしでは不可能。本格的なキャンピングカーを買うのは無理でも、バンやワゴン、それどころか軽自動車だって改造すれば車中泊仕様にすることができるため、交通費や宿泊費も安く上がり機動力抜群となれば、人気が出るのも当然という気がする。
正直、個人的にもめちゃめちゃ興味がある。以前旅先の銭湯で世間話をした年配のおじさんがまさにそうやって旅をしている人で、リタイア後1年のうち数カ月は車で暮らしているが、たいして金もかからないと言っていた。私もリタイア後どころか今から車を改造して車中泊の旅に出たいぐらいだ。
そんなわけで「カーネル」、冒頭からみっちり読み込んでしまった。
最新号(復刊号)2019秋号vol.43の特集は「防音」。車中泊では、周囲の車のエンジン音やドアの開閉音など音に悩む人が多いらしい。なるほどそういう苦労があるわけか。他にも冬の防寒、夏の暑さや虫対策、収納、電源、窓の目隠し、治安、そして何といっても宿泊できる駐車場をどうやって探すかなど、特集テーマには事欠かなそう。道の駅などでのマナーについてもときどきニュースになっており、そのへんの事情も気になるところだ。
読んでいて一番目を引いたのは、実際に車をカスタマイズし旅をしている人たちの紹介記事である。それぞれがスタイルに合わせて自分好みの車中空間を作り上げており、旅における利便性だけでなく自分の世界を作れるところもこの趣味の魅力のようだ。最新号には、家に住むのをやめ、車でミニマムな生活をしながら全国のイベントでDJとして働く男性が取り上げられていて憧れた。クルマに入りきらない荷物はトランクルームに預けているそうで、自分も独身だったらそんなふうに暮らしてみたい。
お気楽な話ばかりではない。はっとしたのは災害時の車中泊問題。突如家を失い、車での生活を余儀なくされた場合の対処法など、今後別冊が出るらしいので読んでおいて損はなさそう。=朝日新聞2019年12月4日掲載