爆薬のプロで、20世紀の指導者たちを次々と手玉に取った不死身の男。そんな100歳のおじいちゃんが主人公の冒険譚(たん)で世界を魅了したスウェーデンの作家ヨナス・ヨナソンさんが、このほど初来日した。
新聞記者、テレビ番組制作会社社長を経て、2009年にデビュー作『窓から逃げた100歳老人』(柳瀬尚紀訳、西村書店)を発表。45カ国で読まれ、1千万部を超えるヒットとなった。「愚行の連続だった20世紀の歴史を書きとめておきたかった。そのガイド役として100歳のアランが生まれた」とヨナソンさん。
成り行き任せでフランコやスターリン、トルーマンらの命運を握ったアランは、続く最新刊『世界を救う100歳老人』(中村久里子訳、同)で、トランプ大統領や金正恩委員長ら現代の指導者たちを相手に、これまた成り行き任せのドタバタ劇を繰り広げる。
「人間を見下す指導者も、一人の人間にすぎない。彼らが人間らしい心をもって自己を客観視できれば世界の進む方向も変わってくるはず。それを今回は書きたかった」
相変わらず権威や政治に無頓着なアランだが、今作では時代を映してタブレット漬け。「ネット上の議論は、物事の白黒を単純化しすぎて分析も浅くなりがち。その影響を過小評価してはいけない」とヨナソンさんも危ぶむ社会に放り込まれるわけだが、作品から伝わるメッセージは変わらない。「人生なんとかなる。どんな時も笑いが大事」(藤崎昭子)=朝日新聞2019年12月4日掲載