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「老人の美学」など、今週注目の新書5選(朝日新聞2019年12月21日掲載)

『老人の美学』

 85歳の作家が書き下ろした人生論。自作の小説の高齢の登場人物たちや著者自身の体験などを紹介しながら、美しく老いるための知恵を書く。ちょいワル老人としての好かれ方から、自分史執筆のススメ、死を美的に迎え入れる方法まで、重くなりがちな話題を軽妙に、痛快にさばいていく。
★筒井康隆著 新潮新書・770円

『日本人論の危険なあやまち』

 認知科学が専門の著者が、「日本人は集団主義的だ」という「通説」をいろいろな調査研究から多角的に検証。この「通説」は「タテ社会」論など、様々な理論も派生させたという。「通説」が成立した歴史的経緯を考察、文化ステレオタイプの誘惑とわなを読み解く。
★高野陽太郎著 ディスカヴァー携書・1210円

『世界史のミカタ』

 宗教とは、国家とは、帝国主義とは。国際日本文化研究センター教授の井上氏と、小説家の佐藤氏の対談で、西洋史、東洋史の枠を超えた世界史観をまとめた。中央アジアの遊牧民への視点、明治維新とフランス革命の類似性など、現代の世界情勢を読み解く知見ももたらす。
★井上章一・佐藤賢一著 祥伝社新書・968円

『地名崩壊』

 合併や災害復興などで新しい地名が誕生する中、土地に由来する地名が消されていく。山手線新駅の「高輪ゲートウェイ」といったキラキラ駅名、平成の大合併でのひらがな市町の急増や、不動産が高く売れるブランド地名などの事例を列挙。地名改変の「裏」を地図研究家が検証する。
★今尾恵介著 角川新書・946円

『日本の民俗宗教』

 日本の民俗宗教について、仏教伝来以前の信仰から現代まで、どう形成されたかを追う。それは、仏教やキリスト教、明治の近代化政策など様々な文化や宗教、制度に影響を受けて変容し、生活に溶け込んだ。大嘗祭(だいじょうさい)、祇園祭、盆踊りや門松、ねぶたなどのルーツを解説。
★松尾恒一著 ちくま新書・968円=朝日新聞2019年12月21日掲載