「患者安全への提言」書評 医療機関にとどまらぬ教訓
評者: 黒沢大陸
/ 朝⽇新聞掲載:2020年02月22日
患者安全への提言 群大病院医療事故調査から学ぶ (生存科学叢書)
著者:上田裕一
出版社:日本評論社
ジャンル:医学
ISBN: 9784535984882
発売⽇: 2019/11/20
サイズ: 22cm/197p
患者安全への提言 群大病院医療事故調査から学ぶ [編著]上田裕一、神谷惠子
書名が「患者安全」であって「医療安全」ではない。
群馬大学病院で2010~14年にかけて手術後の患者が相次いで死亡した医療事故。内部委員が過半数の事故調査委員会の閉鎖性や不備が指摘され、学外者だけの委員会が再構成。個人の責任追及でなく原因を究明し、再発防止に役立てようと検証した。その6人の委員が本書の著者だ。
調査委の役割や「患者参加型医療」など安全への提言をまとめた。6人の座談会からは他病院も含めて医療者や病院の立場や体質が垣間見える。ミスとの向き合い方、職種間や患者との意思疎通。教訓は医療機関以外にも響きそうだ。
医療事故に遭わずとも、「単純換算で年間2万2800人の患者が医療過誤で亡くなっている」との推計をみれば無頓着ではいられない。医療関係者は、ぜひ読んでほしい。患者がすがるのは、「地域医療の最後の砦(とりで)」と頼られる群大病院だけではない。