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朝倉未来さん「強者の流儀」インタビュー YouTuber兼格闘家がブレない思考で手にした、自由な生き方

文:井上良太、写真:有村蓮

「弱い朝倉未来」が初の著書で伝えたい、弱さを知る大切さ

――先日(2020年2月22日)のRIZIN.21、ダニエル・サラス戦でのKO勝利、おめでとうございます。危なげない戦いぶりでしたね。

 ありがとうございます。そうですね。でも、思っていた以上に相手が強かったです。

——勝利で終えた試合から5日後の2月27日に、朝倉さんの初の著書『強者の流儀』が発売されました。今の朝倉さんにぴったりのタイトルですが、本を出すことになった経緯を教えてください。

 僕は強気な言動が目立つと思いますが、メンタルから肉体からすべて完璧というわけではないと思っています。飽き性だし。それを工夫によって、強く見せるし、継続させて成功に導いてきました。それができるのは、弱い自分を理解しているからなんです。そして、僕のように弱い人はたくさんいるはずなのに、自覚していない人が多すぎるんじゃないかと。そういった人に『強者の流儀』を通して僕の考えを伝えることで、たくさんの人の人生が変わるんじゃないかと思ったのがきっかけですね。

 また、自分が弱いのは自覚しているけど、それで諦めてしまっている人はもっと多いと思います。それが工夫や考え方次第で変えられることを知ってほしいんです。

——朝倉さんが自身を「弱い」と考えているのは意外だったんですが、本にも「人よりも意志が弱く弱点だらけで、とても一人では生きていけない脆弱な存在」と書かれていますよね。その上で自分を客観視し、分析して成功をつかむための実践的なアドバイスがまとめられています。今、人間関係に悩んでいたり、やりたくない仕事に縛られていたりする人がもっと自由に生きるためのヒントもあると思いました。

 人間関係で苦しんでいる人は、まず自分を分析した方がいいと思います。きっと何か自分に悪いことがあるからうまくいかないんだろうし。それが客観視ですよね。仕事が楽しくないと悩んでいる人も、やっぱり理由を探るべきです。

 本当に自分がやりたい仕事かどうかは簡単にわかると思いますよ。よく言うのは「10億円とか大金をもらって、次の日にその仕事に行くかどうか」。僕はお金を手にしてからもトレーナーの仕事としてジムに通っているし。「そんなに稼いでるのになんで?」って聞かれますが、好きだからなんです。

 僕は楽しくない仕事を頑張って、休日に楽しんで挽回するような生き方には反対です。仕事って1日8時間とかあって、1日の3分の1も働いているわけですよね? 一生で考えたら10年分ぐらいなのかな。それがつまらない時間か幸せな時間かで、人生の幸福度は全然違うはず。そうであればやっぱり好きな仕事をやりたいです。だから大金を手にしてからも行くような仕事は好きだろうし、辞めてしまうような仕事なら「お金のために働かされてる」と言われてもしょうがないと思います。

——そんな朝倉さん自身は今、自分が理想とする自由を手にできていると思いますか?

 僕はすでに自由だと思いますよ。まあ、今までもずっと自由に生きてきたんですけど。

自分に嘘をついて嫌いなことをやるのはよくありません。(P74)

本当にやりたいというメンタルをキープできたときに、人間は一番成長できるのだと思います。(P152)

何か日常的に望まないストレスを感じる環境にあるのであれば、環境を変えた方がいいでしょう。たまたまの出来事でやつれているなら、ちょっと休憩すればいいんです。(P153)
(いずれも『強者の流儀』より)

――本の中でも「人生で求めているのは自由」で、自由に生きるためには「信頼できる少しの仲間と、お金と、責任と、そしてぶれない軸」が必要と書かれていますね。朝倉さんの発言の中によく「自分はフラットな性格だ」というのがあって、それが「ぶれない軸」になっているのかなと思ったのですが、昔からそういう性格だったんですか?

 頑固な子供でしたし、世の中のすべてを疑っていました。自分の意見を一番尊重していたというか。なので、先生が言ったことすべてが正しいとも思っていなかったし、多くの人が賛同する意見でも、自分で確かめない限りは信用しないタイプでした。

——先生とぶつかることも多かったんではないですか?

 腑に落ちなければ相手が先生でも言い返していたから、ぶつかることは多かったですね。そして言い返すと、内容にかかわらず悪いことだと決め付けられてしまう。他の生徒からも「なんでそんなこと言うんだ?」みたいな。それは感じていたけど、ブレることはなかったです。だから先生からも生徒からも、結構嫌われていたと思いますよ。

——嫌われるのって誰しも嫌じゃないですか。それでもブレることがなかったのはなぜだと思います?

 元々、一人の時間も好きだし、それほど友だちを欲する性格じゃなかったからかもしれません。大人になって、寂しいという感情が人よりも薄いと気づきました。ただ、嫌われていたとはいえ、友だちは一定数いましたよ。僕のそういうとこに好感を持ってくれた人もいてくれて。

——それは例えば、朝倉さんのYouTubeにも登場する吉田さんや岡さんですかね。中学時代の先輩である2人とは、生意気だと絡まれケンカもしたけど後に仲良くなった。そんなエピソードも珍しいですね。

 相手を分析する癖というのは格闘技だけでなく、普段の生活でも同じで、表情や仕草でわかるんです。だから、敵意を向けているようでも本心はそうでないというのを見極めていたんじゃないかと。

 当時の僕は年上から敬語を強要される意味がわからなくて、「なんで敬語使わなきゃいけないの?」とずっと思っていました。吉田くんや岡くんは実はいい人なんだけど、世間の掟というか「年上だから年下が敬語を使わなければいけない」といったプライドが、年上の立場からしたらあったのかもしれない。でも僕はそこで、彼らに本当は仲良くしたい気持ちもあるんじゃないかと感じ取ったんです。

 今は敬語の大切さも理解して使うようになりましたけど、年齢に関しては今でもそれほど重きを置いていません。歳を重ねているから偉いとは思わないし、年下ですごい人もたくさんいるし。あくまでその人自身を見ます。

——そう聞くと朝倉さんはとてもフラットで、裏表がない人のように思えます。

 自分でもそうだと思います。裏表がないからこそ、すごく冷たい人に見られることもあるし。相手を傷つけないために嘘を言うこともなくて、何でも素直に言っちゃうんです。

 例えば、髪を切った人に似合っているか聞かれて、本当に似合わないと思ったら「似合わない」って言います。僕に感想を求めてきたんだから、僕が似合わないと思ったらそれでいいじゃないですか。「似合ってる」と嘘をついて、本当にその人に似合ってない方がかわいそうだと思いますよ。

僕は、八方美人になりたくない(中略)八方美人でいたら、深く分かりあえる友達や仲間とは出会えないと思います。(P60)

「格闘家がYouTuber」でなく「YouTuberが格闘家」

——朝倉さんは現在、ドッキリや対決企画を中心にバラエティ豊かな動画を投稿するYouTuberとしても人気ですね。YouTubeをやりたいと思ったのはいつ頃からでしょう?

 やろうと思ったのはチャンネル開設(2019年5月)の2年前ぐらいからで、それまではハマるというほど見ていたわけではないです。研究するために格闘技の試合を見たり試合に向けたプロモーション映像を見たり。あとはディスカバリーチャンネルとか。いわゆるYouTubeっぽいチャンネルはそれほど見てなかったです。

 でも始めようと決めたあとは、トップYouTuberと呼ばれる人たちの動画のほとんどに目を通すなど、徹底的に研究しました。やるならちゃんとYouTuberにならないと格闘技ファン以外の層を獲得できないという考えに至ったんです。「格闘家がYouTuberになった」じゃなく「YouTuberが格闘家だった」というふうにしようと。そこが他の格闘家と違うところだと思います。あとはそれ以外にも、僕の企画力などがあってここまでの成功があるので、他の格闘家がちょっと真似しただけでは同じように成功はできないと思いますよ。

——昨年12月、一緒にYouTubeをやる仲間として、吉田さんが愛知から東京に移り住むかたちで合流しました。それはたんに一緒にやりたいというだけでなく、吉田さんの人生をもっと良くしたいという友情のようなものを感じました。

 そうですね。吉田くんは友だちだから、僕と一緒に楽しんで仕事をしようよっていう思いはあります。それに仲がいいからこそ、僕に責任感が生まれると思っています。わざわざ愛知を出て東京に来てもらって、一緒に働いてもらっている。金銭面も含めて、僕はこの人たちを不安にさせるわけにはいけないですから。一方で、彼らが僕を「守ってくれる存在」だとも思っています。伝えるのが難しいんですが、友だちというのは僕が認めている存在で、そういう人は僕を支えてくれる存在なんです。具体的に何から守ってくれるとかではなく、感覚的な部分ではあるんですが。

 「どんなに仲が良くても、友だちと仕事をすると友情が壊れる」ってよく言いますよね? 僕がYouTuber一本だったらそうなるかもしれません。でも、僕は格闘家やジムのインストラクターもしていて、他にもやりたいことはいろいろある。僕にとってはYouTubeがすべてじゃなくて、そういう意味でみんなと一定の距離感が保てているのかなと思います。

他にやることがない人は一人の女性を愛するようなことをしてはダメですよ。他にも没頭できるものを見つけて、バランスを取るようにしましょう。(P208)

今年はRIZINを頑張ってもいいのかな

——『強者の流儀』には「本気でタイムマシンを作るために図書館で相対性理論について勉強した」なんてことも書いてありました。朝倉さんの読書について教えてください。

 少年院に入っている時にいろんな本を読んだし、以前は1週間に1〜2冊は読んでいたんですが、最近は忙しくて月に2〜3冊です。ジャンルは、恋愛ものはあまり好きじゃないですがそれ以外なら何でも。タイトルやあらすじを読んで「どういう意味だ?」ってわかんない系は、特に気になっちゃいますね。

——格闘技、YouTube、プライベートで、今後やりたいのはどんなことでしょう? 過去のネット記事で「格闘技を長く続けたくない」という発言がありましたが、先日の試合の後は「2020年は頑張ろうかな」と言っていましたよね。

 「格闘技を長く続けたくない」というのは「試合を続けたくない」という意味で、格闘技は一生やっていたいです。格闘技はふわっとした練習の時が一番楽しいので、試合に出るのは30歳ぐらいまでにしようと思っていたんです。ただ、その意識は最近また変わりました。

 立場や役割によって人は変わっていくと思うんです。そういう意味で、僕は今RIZINに求められていて、RIZINを世間に広める役割も僕が一番担っていると思います。そうすると、27〜28歳にかけてのこれからの1年間で頑張ってもいいのかな、という思いはあります。

 YouTubeに関しては、媒体としての人気がいつまで続くかわからないし、あるから利用しているだけですがってもいません。だから、他に置き換わるならそれでも良くて。どんな媒体であれ、これからも今みたいに楽しんで、ずっと自由に生きていきたいですね。