1. HOME
  2. インタビュー
  3. 新作ドラマ、もっと楽しむ
  4. ドラマ「きょうの猫村さん」に出演の染谷将太さん 「松重さんの『猫村さん』がいる異空間を楽しんでいます」

ドラマ「きょうの猫村さん」に出演の染谷将太さん 「松重さんの『猫村さん』がいる異空間を楽しんでいます」

文:根津香菜子、写真:有村蓮

実写にしようというアイディアがあっぱれ

——本作が実写ドラマになると知った時、私を含めた多くの人がまず思ったのが「猫村さんはどうするの?!」ということだったと思います。CGなのか、本物の猫なのか、と色々と想像していた中で「こう来るか!」という、いい意味で予想を裏切られましたが(笑)、実写化しようと思った制作スタッフの心意気を感じました。染谷さんは今回のお話をうかがった時、どう思われましたか?

 いや、おっしゃる通りです。僕もまさかと思いました。実写にしようというアイディアが出てくることがあっぱれですよね。この作品って実写に結びつきづらいじゃないですか。でも、最初にお話をいただいた時「これは絶対面白い」と思いました。元々原作を読んでいて、自分も「猫村さん」ファンの一人でしたし、演者として参加できるとは思っていなかったので、嬉しかったです。

©︎テレビ東京

——原作のどんなところがお好きですか?

 読んでいて、ほのぼのしますよね。そんな作品全体の温度感が好きですし、さらにその中で温度差がたくさんあって、猫村さんと、猫村さんに接する人たちの絶妙なバランスが好きです。ストーリーには毒気もたくさん散りばめられているんですけど、なぜかそれが心地よくて、こんなにほんわかした毒気は見たことがないです。

——尾仁子と同じ中学に通うヤンキー仲間、強役のオファーを聞いた時の率直なお気持ちを教えてください。

 強は中学生なので、まず「自分で大丈夫かな?」っていうが一番にありました。でも、松重さんが猫村さんなら、その時点で大丈夫だろうと(笑)。監督からは、ちょっとアホで憎めない、愛されキャラにしたいと伺ったので、それはやっていても面白くて、楽しい役柄です。強は「俺は硬派だから」とか「気合入ってるぜ!」って自分では思っているんですけど、そのやり方をはき違えているところがあって、そんなぶれない一定のアホさみたいなものを貫けたらいいかなと思っています。

 尾仁子役の池田エライザさんとは久々にご一緒させていただいたんですが、前回共演した時も、池田さんはヤンキー役だったんですよね。でも今回はまた全然違う世界観なので、新たな感覚と言いますか。なにせ、一緒にお芝居していても、横を見ると猫村さんがいらっしゃいますから(笑)。そんな異空間の中でまたご一緒できることを楽しんでいます。

——私、原作の「揚げパン、カリカリなワケ~?」という強のセリフが大好きなので、あの独特な言い方を染谷さんがどんな風に演じられるのか、今から楽しみです!

 「~なワケ〜」は、強の9割を占めるくらい重要な語尾ですよね。さっき撮影した時に、監督からは「語尾をちょっと上げて、印象的な口癖にしてほしい」と言われていたので、どんな感じになっているのか、ぜひ注目してください。でも、見ている人がイラッとしなきゃいいんですけどね。いや、別にイラッとしてくれてもいいんですが(笑)。

——演じられた強は、脇役ながらも犬神家の人々以外で猫村さんと接する機会が多い役柄ですが、松重さん演じる猫村さんと対面されて、いかがでしたか?

 松重さんが猫村さんを演じることはプロットで知ったんですが、そのビジュアルを見た時、松重さんがあまりに愛おしくて、思わず冷蔵庫に貼りたくなるくらいでした(笑)。でも、どうしても笑ってしまうので、ドラマ化の情報がウェブニュースで発表になった時、スマホで何回も松重さんの画像を見て「よしよし。大丈夫、大丈夫 」と、あらかじめ慣れておこうと思ったんです。さっき初めて一緒のシーンを撮影したら「あ、見慣れてるから大丈夫だ」って思ったんですけど、ふと我に返った時、ちょっとやばかったですね(笑)。最初は緊張していましたし、この髪型のおかげで我に返る隙はなかったんですけど、それがちょっとずつ緩んできた時に、可笑しさが込みあげてきてしました。1話が2分30秒という短い時間ですが、毎週やってくるこの不思議な時間が自分自身も楽しみです。

©︎テレビ東京

読書と散歩に浸っていた中学時代

——本作を含め、『バクマン』や『寄生獣』のような漫画から、東野圭吾さんの『パラレルワールド・ラブストーリー』など、数多くの原作ものに出演されています。染谷さんが原作実写化に出演される時に心掛けていることはありますか?

 原作の意識の仕方は作品ごとに変わってきます。監督がどれくらい原作を意識されるかで、こちらの意識の仕方も変わってきますし、自分は監督次第かもしれないです。例えば「原作を読まなくてもいい」とか「原作を読んでなかったら読まないで」とおっしゃる監督もいますし、逆に漫画のコマを一緒に見て「このショットはこういう感じにしたい」とか言われる監督もいます。でも、最終的な落としどころは脚本だと思っているので、自分は脚本を一番大事にしていますね。今回演じた強も、見た目は原作から入っていく中で、実際に肉体になって、しかも自分が演じるとなったらこういうことだろう、という思いでやっております。

——今回は中学生役ということでしたが、ご自身の中学時代についても教えていただきたいです。以前、染谷さんが「中学生の頃、突然本を読むようになった」とおっしゃっていた記事を拝見したのですが、それは何かきっかけがあったのでしょうか。

 中2ぐらいまでは、頑張って人と関わろうとしていたんです。でもそれにすごく疲れてしまって、中3ぐらいから「別に頑張って人とつるまなくていいな」と思い、じゃあ何をしようかと思って始めたのが、読書と散歩だったんです。休みの日は、地元から渋谷まで2、3時間歩いて、映画を観た後、公園で読書をしてから、また歩いて家まで帰るということをよくしていました。読んでいたのは、その時流行っていたものや、映画化される作品を選んでいた気がします。思春期でしたしね。そういう行為に浸ってた自分もいたと思うんです。別に渋谷まで電車で行けばいいのに、歩いて行って公園で本を読むというのはすごく贅沢な時間だったなと思います。

——特に思い出に残っている作品はありますか?

 初めて小説を最初から最後まで読めたのが『走れメロス』でした。小学校中学年ぐらいだったと思うんですが、小説を最初から最後まで読めたというだけですごく嬉しくて、記憶に残っています。あとは、中学生の時に伊坂幸太郎さんの作品をよく読んでいたんですが『アヒルと鴨のコインロッカー』を電車の中で読んでいたら、ちょうどボブ・ディランの話が出てきた時に、たまたま iPod shuffleから「風に吹かれて」が流れ出して、電車で泣くっていう(笑)。今思い返すと恥ずかしいんですが、思い出に残っていますね。

 最近はずっと大河の台本とにらめっこしているので、本を開くタイミングが中々ないんですけど、物語だとサスペンスが好きです。昨年読んだ『そしてミランダを殺す』は、殺人ミステリーなんですけど、話の構成が本当によくできているんです。登場人物の女性が実に巧妙に色んな人を殺していくんですけど、その女性が単なるサイコパスではないんです。彼女が物語っている感情は「まあそうだよね」と、至って普通に思うことなんですが、その流れで普通に人を殺しているんですよ。その描き方が、ごく自然なこととして書かれていて、読んでいるこっちも違和感なく読めてしまうのが恐ろしいなと思うんです。