星海社が電子書籍専用のフォントで電子書籍の販売を始めた。出版社が作ったフォントがアマゾンで販売する作品に埋め込まれ、選択できる。「世界初」をうたう。太田克史社長は「画面で読みやすく心に残る文字がある」と話す。
漫画などを除いて電子化してこなかった同社。「電子書籍はどの本も同じ判型と組み方。版元の仕事は、作家の原稿の魅力がどんな形で世に問えば伝わるかという判断にあるはずで、それが果たせない状況で電子書籍を作るのは、僕は違うと思った」。こだわりが専用フォントに向かった。
デザインは「ヒラギノ」などで知られる字游工房。ノンフィクション用の「なぎ」は「クリアで明晰(めいせき)に読める」、小説用の「フミテ」は「言葉の流れがゆるやかに心に入る」という。かなに特徴があるが、一文字ごと違いはわずか。「1冊通して今までの電子書籍と違う何かを残せるか。読者の審判を待ちたい」(滝沢文那)=朝日新聞2020年7月18日掲載