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和山やま「女の園の星」 ディテールが支える「ちょっとだけ変」

 手塚治虫文化賞短編賞受賞作『夢中さ、きみに。』の作者の最新作。とある女子高の国語教師・星三津彦の日常を淡々と描く……と言ってしまえばそれまでだが、その日常がほんのちょっとだけ変なのだ。5ミリぐらい足が宙に浮いてる感じとでもいうか。

 学級日誌の備考欄で勃発した絵しりとりの謎絵に悩み、教室のベランダに宙吊(ちゅうづり)りになった犬に呆然(ぼうぜん)とし、漫画家志望の生徒のシュールすぎる作品にアドバイスする。ありそうでありえないのにすごくリアル。その絶妙のバランスを支えるのが、居眠りしている生徒の靴下が半分脱げていたりするディテール描写だ。

 星先生の天然な言語センスと生徒たちの雑な会話が笑いを誘う。ややウザい小林先生(あだ名はポロシャツアンバサダー)ほか、キャラが立っているのは先生のほう。生徒は一部を除き現状ほぼモブ扱いで「女子高生」という集団として描かれている。その集団パワーに対峙(たいじ)する先生の当惑と諦観(ていかん)も見どころだ。

 そのなかで、星先生ウォッチャーの鳥井さんは言葉遣いも古めかしく異彩を放つ。星先生の私生活に関する伏線も気にかかる。そして何より、こんな変な話を思いつく作者の思考回路が最大の謎!=朝日新聞2020年8月1日掲載