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心にひびく一枚一枚を味わう 「子どもの本棚」オススメ本3冊

「さがす」

 著者がこれまで撮りためてきた世界各地の子どもたちの写真に、自分自身の来し方を重ねた写真絵本。「自分の場所」はどこなのか? 「生きる意味」は何なのか? 今年68歳になる著者は、それをさがして、弾丸のとびかうアフガニスタンやコソボ、極寒のグリーンランド、灼熱(しゃくねつ)のアラビア半島など、さまざまな環境の中でさまざまな生き方をしている人々に出会ってきた。そして今、ようやくその答えを見つけ、「さがしていたものは、いま、自分の手の中にある」と語る。世界を駆けめぐってきた写真家ならではの、その答えとはどういうものなのか? 心にひびく写真の一枚一枚、言葉の一つ一つを味わいながら、読者も一緒に考えてみてほしい。(長倉洋海著、アリス館、税抜き1400円、小学校中学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「わっしょい 深川八幡 水かけ祭り」

 江戸三大祭りのひとつに数えられる深川八幡祭り。その様子が壮大なスケールで描かれたこの絵本を見ていると、まるで祭りばやしの「てけてんてん」という音色が聞こえてくるようで心も躍る。祭りの準備から山場までが少年の目を通して描かれていて、行事を継承していく人たちの助け合いの様子などが見事に伝わってくる。とりわけ各町内がそれぞれのおみこしをかつぐ場面は迫力があり、読者も一体感を味わうことができる。全国のお祭りファンにおすすめしたい一冊。(やじまますみ作、ポプラ社、税抜き1600円、5歳から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「ぼくの『自学ノート』」

 梅田さんは新聞記事の切り抜きを貼り、感想や調べたことを書き込む「自学ノート」を小3から続けている。新聞に興味や疑問を見つけ、膨大な文献の海から時間をかけて答えを探し解決しようとする。また、ノートを通して多くの人たちと交流を深め、世界を広げている。すぐに答えが出せると人は考えなくなる。想像力も乏しくなり、目の前の相手を思いやれないこともある。考えることをやめなければ世界は変わっていくのでは。梅田さんに背中を押される思いだ。(梅田明日佳著、小学館、税抜き1500円、小学校高学年から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2020年8月29日掲載