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てづかあけみさんの絵本「はじめてのうちゅうえほん」 実感できるものさしで、宇宙を知ろう

文:日下淳子、写真:加藤史人

宇宙は今そこにある自然

――夜空にまたたくあの光の粒は、いったいなんだろう? 子どものそんな素朴な疑問にきちんと答えられる大人はどれくらいいるだろうか。星って何? 太陽って何? 宇宙って何? 『はじめてのうちゅうえほん』(パイ インターナショナル)を描いたてづかあけみさんは、身近な宇宙について、子どもも大人も一緒に考えられるような絵本を作りたかったという。図鑑とも物語とも違う、宇宙への思いが、かわいらしいイラストでわかりやすく描かれている。

 私は、宇宙をごく身近な自然と考えています。私の家のそばには川があって、その上には当たり前のように空があって、夜になれば月が見える。そういう自然や宇宙の感覚を、普段から生活の中に感じていたいと思うんです。この絵本も最初は、空を見上げている場面から始まります。これは川原で空を見ている自分の感覚を想像して描いているんです。空をずっと見上げた先は宇宙、宇宙には月があって、その月ってどんなところで、月から見た地球はどんなふうなのか、そういう想像が広がっていく様子を描きました。

『はじめてのうちゅうえほん』(パイ インターナショナル)より

 実は宇宙に関する私の科学的知識はまだ浅くて、本を描くために調べていったところ驚くことばかりでした。ただ、情報を詰め込んだ知識の本ではなく、自分の実感から宇宙を感じられる本にしたかったんです。だから絵本の中に情報を入れ過ぎないことを心がけました。宇宙は発見に溢れていて、物語だけでは物足りないけれど、マニアックすぎても興味が離れてしまうことがあります。実感できるものさしで見られるように、「地球から一番近くの月まで、新幹線で行ったら53日もかかる」「月では、いつもの力で6倍の高さまでジャンプができる」というふうに、誰でもわかりやすいように表現しました。

『はじめてのうちゅうえほん』(パイ インターナショナル)より

月旅行がもっと身近になる日がくるかも?

――『はじめてのうちゅうえほん』は、てづかさんがはじめて自分から企画を出した絵本。当初は、一般向けのやさしい宇宙絵本はなかったので、人気が出るなんて思ってもいなかったという。2009年の世界天文年に合わせて発売が決定。宇宙への関心が高まるきっかけになった。てづかさんは宇宙の中でも、特に地球と月に興味があったという。

 もしできるなら、月に行って地球の姿を見てみたいと思っています。「今度の休みには月に行こう」なんて旅行感覚で行ける時代も、そう遠くなさそうじゃないですか? 宇宙へのロケットの打ち上げも見に行ったことがあります。種子島にJAXAのロケット打ち上げ施設があるのですが、日本宇宙少年団相談役の齋藤紀男先生にお話を聞いているうちに、打ち上げが見てみたくなって。宇宙マニアの人以外にも、女性一人でツアーに参加している人がけっこういるということにびっくりしました。そして「種子島宇宙センター」の小さな売店に、『はじめてのうちゅうえほん』が販売されていました。日本で一番宇宙に近い南の島にまで納品されていたことに感激しました。(笑)。

 絵本を読んだ方も、実際に見てみたい、もっと調べてみたいと思ってくださるのは、嬉しいです。絵本では、純粋に驚いたことや感動したことを、伝えていきたいという思いがあります。子どもにわかるようにというだけでなく、自分にもわかるように、大人でも興味を持ってくれるように、どういう切り口で描いていくかを大事にしていますね。「はじめての」シリーズは、この宇宙のほかに、天気や星空、身体などをテーマにしていて、今年は齋藤先生監修の『はじめてのちきゅうえほん』を作りました。地球の自転の話から、水や大気のこと、生命であふれていることなど、感覚的におもしろいものを選ぶようにしています。もともとは幼稚園児でもわかりやすいように全部ひらがなで描いていたんですが、大人の読みやすさも考えて簡単な漢字はあえて使い、ふりがなをふるようにしています。

『はじめてのちきゅうえほん』(パイ インターナショナル)より

 普段、人間がつくったものに囲まれている生活をしていると、人も「自然」である、ということを忘れがちです。絵本を通して、いろんな人に、そういう自然の不思議さやすごさ、ありがたさに気づいてもらえたらと思っています。大人も子どもも、身近な自然から感覚のスイッチを気軽に押せるきっかけとなるような本をつくっていきたいです。