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「黄禍論」書評 アジア諸国への恐怖、百年の歴史

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2020年11月14日
黄禍論 百年の系譜 (講談社選書メチエ) 著者:廣部泉 出版社:講談社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784065209219
発売⽇: 2020/09/11
サイズ: 19cm/237p

日本と中国が同盟し、西洋が征服される−。日露戦争を契機に生まれ、アメリカの根底に刻まれた強迫観念。政治・外交に影を落とし続ける「人種主義的思考」とは何か。100年以上にわ…

黄禍論 百年の系譜 [著]廣部泉

 黄禍論は、19世紀末の歴史家や軍人などが源流になっていると著者は説く。
 つまるところそれは日本と中国が共同してアジア諸国を率いて、欧米を圧倒するのではないかという恐怖だと指摘する。きっかけは明治期の近衛篤麿の同人種同盟論だったとみる。ヨーロッパで騒がれ、アメリカに浸透した。日本、中国、それにインドが加わると7億4千万もの人口が欧米を恨んでいる、だから防衛しなければ、となる。
 この黄禍論的思考法を元に、20世紀から現在までの歴史を駆け足風に整理してみせたのが本書だ。第1次世界大戦、日中戦争、真珠湾攻撃、日米経済戦争など一連の史実を解き明かし、欧米は常に日中の連携におびえ、その離反と対立に意を用いてきたと解説される。逆説的に日英同盟などはイギリスの裏切りに映る。こうした見方は陰謀論に近いとの感もする。
 一方で、トランプ大統領の位置づけがわかるのも今時の読み方といえようか。

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