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リラックマの作者・コンドウアキさんの絵本『ゆめぎんこう』 夢であの人に会いたい…「ゆめのアメ」売ります

文:日下淳子

夢を渡せたらいいのに

――店主のぺんぺんと、夢を食べるバクのもぐもぐが、夢を買い取って売る「ゆめぎんこう」を運営するという物語。絵本雑誌MOEの別冊付録として始まった絵本だそうですが、このミニブックのときから、読者の反応がすごかったようですね。

 読者のみなさんからたくさんメッセージいただいたのには、びっくりしました。自分の夢がアメにできて、アメを食べたら見たい夢を見られるというストーリーは楽しいのではと思って描いていたのですが、皆さん「泣けた」という感想が多かったんです。おじいさんが亡くなった妻の結婚記念日に、夢の中で会えるんじゃないか、と夢を買い取ってもらうところですね。

――絵本の中で、おじいさんが生前の奥さんとピクニックしたり、シャボン玉に入ったりする夢が描かれていて、見ているこちらも幸せな気分になりました。後から話す思い出話も、心が温かくなります。

 「歳を重ねた方が見たい夢ってどんなのかな」と考えたときに、会いたい人がいるからかな、と思ったんです。この絵本を描く少し前に、私自身が大切な人を亡くしたので、その影響は大きかったと思います。その方が、本当に私の夢に出てきたことがあって、嬉しかったんです。でもそれを見られない人もいて、夢を渡せたらいいのにと思ったところから、この『ゆめぎんこう』が出てきたように思います。

『ゆめぎんこう』(白泉社)より

――好きな夢が見られるアメって、すごく魅力的ですよね。「ゆめぎんこう」の棚にならぶカラフルなアメのラベルもワクワクしました。

 わりとオーソドックスに、みんなが見るだろうなという夢を並べたんです。怖い夢も見るだろうし、夜空の夢、虹の夢、おいしいものの夢を見るだろうな、とラベルを作っていきました。私は大爆笑して自分の笑い声で起きることがあるので、大笑いする夢を入れたり、たまにちょっとドキッとするような夢を入れたり。ラベルが文字でなく絵のイメージで描いているので、読みながらどんな夢か想像していただけたら。きっと想像することは、みんなそれぞれ違うんだと思います。

『ゆめぎんこう』(白泉社)より

キャラクターデザインとの違いは

――コンドウさんは、キャラクターデザイナーでもありますが、絵本とキャラクターデザインとでは、作り方は違うんですか?

 キャラクターデザインの場合は、そのキャラクターの性格や背景が文字で説明できないので、絵だけで見せなきゃいけないんです。でもあまり複雑にし過ぎず、見た人が「こんな感じの子だね」と真似して描けるような絵というのを意識してます。

 それに対して絵本の場合は、読んだ人が性格を知ってくれたり、背景を知ってくれたりするので、印象づけとしては、性格や動きに主眼を置いています。それでも、いまは絵本が認識された後にグッズになったりするので、キャラクター単体で取り出しても、印象が残るようにデザインしていますね。絵本のぺんぺんもクリアキーホルダーになったんですよ。

――『ゆめぎんこう』の「ぺんぺん」と「もぐもぐ」というキャラクターは、どんなふうに生まれたのですか?

 主人公は、あまりベテランのペンギンにはしたくなかったんです。まず、「ゆめぎんこう」をおじいちゃんから譲り受けた設定だったので、自分からたちあげた仕事でないから、そこまで仕事に乗り気じゃない感じにしました。やりたくないのは、若手でちっちゃいから、夜が怖いからとか……そんなふうに、ぺんぺんの性格って決まっていったのかなと思います。ぺんぺんがベテランじゃないとすると、仕事を見守るベテランがつかないとなと考えて、相棒のもぐもぐのほうは、おじいちゃんから譲り受けたベテランという設定になりました。

『ゆめぎんこう』(白泉社)より

 キャラクターに関しては、最初にイメージの絵は描いてたんですが、絵からというより、お話の文章から考えるので、その中でぺんぺんたちがだんだん動いてくれている感じがします。絵本の中でカラフルなアメも描きたかったので、キャラクターは白と黒でシンプルに描きました。ペンギンはもともと好きで、それに夢のお話だからバクのもぐもぐということで、まさかのペンギンとバクのお話になりましたね(笑)。

――コンドウさんの生み出したキャラクターは、世代を超えて愛されているように感じます。長く愛される秘訣は何かありますか?

 その時代時代で好まれるビジュアルや性格はあるんだなと思いますね。いま大学でも教えてるんですが、学生さんに「リラックマは幼稚園の頃から好きでした」って言われてびっくりしたことがあります。20年という時の流れがリアルに表れるって、すごいことですよね。

 長く愛されている絵本もそうですが、30年以上たってから改めて読むと、あの頃とは違う気持ちで、当時のことがフラッシュバックされる。そういう記憶をよみがえらせてくれるような、タイムマシンのような絵本やキャラクターを作れたらと思います。来年春には、ぺんぺんたちの第2弾のお話をMOEの別冊付録で予定しています。新たな展開を、楽しみにしていてください。