「占い」に興味があった時期がある。働く女性にインタビューする連載をしていたころ、占いに行った話がよく出てきた。わたしは雑誌の占いを見て、自分に都合のいいところだけ気に留める程度だ。安くはない料金を払ってどんな話をするのだろうと気になった。
彼女たちに話を聞いていると、占いに行きたくなる気持ちはだんだんわかってきた。二十代、三十代になると、努力をすればある程度達成できることばかりではなくなる。仕事にしても人間関係にしても、相手や周囲の状況に左右される。どの道を選べば正解なのか、あれとこれではどちらがいいのか。明確な基準があるわけではない。特に女性は、移り変わる価値観と状況の影響を受けるし、人からの「こうあるべき」という視線や抑圧にさらされがちだ。
雑誌で占い特集を担当していた編集者さんに評判のところを紹介してもらい、占星術、タロット、手相と一通り行ってみた。どの占い師さんも、話を聞くのが上手だった。見ず知らずの人の悩み事を一日中聞いているのだから、なんて寛容で根気強いのだろうと感心した。近い人にはかえって話せないことを聞いてほしい人もいるのだと思った。
占いに行ってみてわかったのは、わたしには向いていないことだった。質問がなさ過ぎて、時間があまってしまった。悩んでいないわけではない。たぶん、人に相談することが全般に苦手なのだ。
紹介してくれた編集者さんの言葉が心に残っている。こうしなければ大変なことになる、などと「脅しや不安になるようなことを言うのはだめな占い」。これは占い以外にも当てはまるし、依存には気をつけたい。
占いは、信じるかどうかというより、自分自身がなにを望んでいるかを知りたくて行くのかもしれない。わたしは相変わらず都合のいいところだけを拾って、普段は忘れているが、たまに占いの特集や本を見たくなる。そんな時期は、自分は今、迷っているときなんだな、と思う。=朝日新聞2020年12月2日掲載