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「会社をやめて馬主やります!アキコノユメヲ」で知る、牧場経営と馬主のお仕事 人との信頼関係で強い馬を作る

文:片岡まえ

 今年もあと1週間、一年の締めくくりに有馬記念を楽しみにしているという人もいるのでは? 今回の『会社をやめて馬主やります!アキコノユメヲ』(原作:信田朋嗣、絵:栗元健太郎/咲、FOD)はズバリ競馬がテーマ。牧場経営に携わり、自ら馬主になった女性が主人公です。

 東京の会社を辞め、競走馬を生産する北海道の実家に戻ってきた西村明希子。牧場経営に携わる父親と弟に「手伝いたい」と告げると大反対され、父親から「競りの売れ残りの3頭をどうするか考えろ」という試験を課されます。

 牧場で育ってきた明希子は、旬が過ぎてしまった馬の買い手探しが一筋縄ではいかないことを十分に感じていました。しかし血統などを示したプロフィールを準備し、写真や動画をSNSに投稿して馬の魅力を発信することにチャレンジ。結局、会社員時代の知人の馬主が、明希子の牧場経営スタートのご祝儀という名目で、破格の値段で購入してくれます。残った2頭は自ら引き取り、馬主になって調教師に預けることに。見事、父親の試験をクリアしました。

 牧場の使命は、レース番組が組まれる2歳の春までに強い馬を育て、馬主や競馬場所属の調教師に売ることです。ケガや病気の予防を徹底的に行い、体調の変化に細心の注意を払います。しかし、相手は生き物。いくら手をかけても完璧はありません。

 明希子が知人に売った馬も、ストレスで壁を蹴っていたことが原因で、出荷直前に脚をケガしてしまいます。100%大丈夫とは言えないけれど治療すれば治ることを馬主に素直に伝えたことが信頼につながり、キャンセルを免れます。馬がケガをしたら、レースどころか馬の一生が絶たれ、最悪の場合は食用にされることも。馬の自家生産以外に繁殖牝馬の預託を受けたり、休養馬の面倒を引き受けたりしてスタッフの収入や馬の育成費をなんとか確保していますが、走らない馬を抱える余裕はないのが牧場経営の厳しいリアルです。高値で馬を売ることももちろん大事ですが、目に見えない馬の未来や価値を信じ、人との縁を大事にしていくという積み重ねで成り立っているのです。

 レースで強みを発揮し、勝てる馬になるかは調教師が重要な鍵を握っています。馬主の主な仕事のひとつに、馬を任せる調教師を選ぶことがあります。馬の体格や気性を一頭一頭見極め、各々に適したトレーニングを行う必要があるため、調教師選びは慎重です。馬主と調教師の間には信頼関係が欠かせず、明希子自身もこれから、調教師や馬主らとネットワークを構築していくことになります。

 馬主が丈夫で強い馬を育て、調教師が特性を生かした競走馬に仕立て、レースでは騎手が馬の力を最大限に引き出す。一頭の馬がレースに出場する裏には、多くの人の思いがあります。それらを乗せて、「アキコノユメヲ」と名付けられた明希子の馬はスタートゲートに立ちます。

「会社をやめて馬主やります!アキコノユメヲ」で知る、牧場経営と馬主、あるある!?

  • 調教師のことを「先生」と呼ぶ
  • 馬主は馬がレースに勝てば賞金をもらえるので、純粋に馬を応援するために馬券を買う。気持ちが強すぎてつい、高めの金額を投入してしまう
  • 牧場に居る時の馬の呼び名とレースでの名前は全然違うこともある
  • 勝負の世界では、人との縁を特に大事にする傾向がある
  • 育てた馬がレースに出る時にテレビに映ると成長がうれしい