1. HOME
  2. トピック
  3. キナリ読書フェス、「好書好日賞」を発表! 「さくら」「銀河鉄道の夜」読書感想文コンテスト

キナリ読書フェス、「好書好日賞」を発表! 「さくら」「銀河鉄道の夜」読書感想文コンテスト

『さくら』受賞作

・愛のある嘘をつこう。しっぽを振り続けよう。#『さくら』西加奈子との後日談付き 「あ」さん

 名セリフ・名シーンだらけの『さくら』。直木賞作家・西加奈子さんの初期の代表作で、この秋には映画も公開されました。この作品の魅力を伝える際、ともすれば、あれもこれも書きたくなってしまいます。読書感想文に限った話ではないのですが、全体を総花的に書くよりも、1~2点に絞って書いた方が文章は力を持ちます。受賞作は、小説のなかでも屈指の名セリフ「嘘をつくときは、あんたらも、愛のある嘘をつきなさい。騙してやろうとか、そんな嘘やなしに、自分も苦しい、愛のある、嘘をつきなさいね」を引用し、「噓」と「家族」について、自らの体験を交えながら思いをめぐらせています。別に感想文を書かれているようですが、これだけで十分に作品の魅力と読み手の思いが伝わってきます。(応募総数34通)

>【新作映画、もっと楽しむ】映画「さくら」で共演の北村匠海さん&小松菜奈さんインタビュー

★次点2作
・『さくら』は「贈与」の失敗と再生の物語 「のーどみたかひろ」さん

・つむじ風のような女の子と、某鬼狩りの男の子に想いを馳せてしまった話ーー『さくら』を読んで 「只熊(ただくま)」さん

 今回の哲学書部門の課題図書『世界は贈与でできている』と今年最大のヒット作『鬼滅の刃』。どちらの文章も、別の作品を参照しながら、『さくら』を読み解いていきます。少々反則ぎみですが、本同士がつながる読み方としてありなのかなと思いました。

『銀河鉄道の夜』受賞作

・秋の夜長に銀河を旅する。 「Green beans」さん

 宮沢賢治作品のなかでも広く知られた『銀河鉄道の夜』ですが、一読して「わからない」ですよね。そこから入る感想文が多かったのですが、わかるところを深掘りしていく文章と、わからないなりに「謎解き」よろしく解釈をつむぎ出す文章に分かれました。そのなかで後者の文章から選びました。「わからない」自分の体験談から、「わからなさ」を掘り下げながら、「わかる」寸前までの断章が連なっていきます。少々長いのですが、それだけに、本と対話する愉悦感がこちらにも伝わってきます。タイトル通り「読書の旅」を堪能している文章だと思います。(応募総数66通)

★次点2作
・星の幸(ほしのさいわい) 「カラエ智春」さん
 ただひたすら「謎解き」を楽しんでいるところに好感を持ちました。

・銀河鉄道の夜と、ももクロと、宇宙 「わいざん(横山文洋)」さん
 少々変化球ですが、ももいろクローバーZの映画「幕が上がる」に導かれて「銀河鉄道の夜」を読み解く手つきが新鮮でした。

受賞作は「キナリ読書フェス」公式サイトで

 課題図書は、ほかに岸田奈美『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(エッセイ部門)、神沢利子『くまの子ウーフ』(児童書部門)、近内悠太『世界は贈与でできている』(哲学書部門)の3冊。岸田さんや出版社による各受賞作は「キナリ読書フェス」の公式WEBサイトでご覧ください。

選考を終えて

 「キナリ読書フェス」の開幕早々、岸田さんにのせられて(?)、こんなことを話しました。「書評やレビューは本が主役、読書感想文は本を読んだあなたが主役。書評はある程度、善し悪しに点数をつけられるけど、読書感想文にはそもそも点数はつけられない」。いざ選考になったとき、後悔しきりでした(笑)。どうやって選ぶんだ、自分。で、結論をいえば、私が読んでいて面白い文章を選びました(「面白い」がまた難しいのですが)。正直私の好みでしかないので、選ばれなかった方も気にしないでください。試験などとは異なり、義務で書いた文章ではないので、ある程度フォーマルで、それでいてフリーダムな文章が並んでいて、読んでいて楽しかったです。読書感想文を寄せていただいたみなさん、岸田さん、お疲れさまでした。