妙に気になるタイトルは、実在の会社名。ひきこもり当事者・経験者が主体の会社社長が、設立経緯や経営への思いを綴(つづ)った一冊だ。もともとIT・ビジネスの教育事業を行っていた著者は、当事者が身近にいたことからひきこもりが集まるイベントに参加。そこでめちゃくちゃ細かい、仕事のデキる人たちと出会い、新たな会社を立ち上げる。
そのサクセスストーリーかと思いきや、事は簡単には進まない。設立半年で、11人中7人が会社に不信感を抱き去ってしまうのだ。それまで、パーセントで表す体調報告やネガティブワード禁止の面談など工夫はしていたが、最優先すべきは一人ひとりの心の安定だったと気づき、週1回メンタルケア相談をするなど、強力なサポートで立て直しを図っていく。
在宅ワークが当たり前になった今、ひきこもったまま働く環境が整い「埋もれた宝」に光が当たる時代がやってきている。コロナ禍で、働き方や生き方を見つめ直した人も多いのではないだろうか。人はみな社会の中で、役に立つ居場所を求めている。ひきこもりであろうとなかろうと、安全・安心に働けるその場所を見つけたとき、人生は輝くのだと思う。=朝日新聞2021年1月16日掲載