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闘志燃え出す「しまパト」 湊かなえ

 都会で暮らす子どものために、地方の親ができることとして、まず浮かぶのが、米や野菜、地元の特産物などを送ることですが、私の場合、新たに「しまパト」を加えたいと思います。

 「しまパト」とは、郊外を中心に多数の店舗展開をしている衣料品チェーンストア「ファッションセンターしまむら」で、掘り出し物を求めて買い物(パトロール)をすることです。淡路島内に「しまむら」は3店舗あり、私は主に、布団カバーや部屋着などを購入していますが、人気アニメやユーチューバーとのコラボ商品も多数あり、若者にも人気がある店なのです。

 田舎に住んでいてよかった。地方在住の若者がそう思えるのは、ネット上で倍の金額がつけられた「しまむら」の商品を見ている時くらい、と言っても大袈裟(おおげさ)ではありません。

 便りがないのは元気な証拠。友だちもできて、楽しく暮らしているに違いない。自分にそう言い聞かせながら、寂しい気持ちをやり過ごす今日この頃、久々に子どもから連絡がありました。

 「一昨日から、しまむらで『呪術廻戦』のグッズが出ているので、見てきてください」

 一昨日? 大人気アニメです。さすがに残っていないのでは、と思いながらも、仕事中のパソコンを閉じて、早速、最寄りの「しまむら」に車で向かいました。ポーチが一つあるけれど、子どもの好きなキャラクターではありません。しかし、お母ちゃんはここで闘志が燃え出します。島内全店舗をまわって、売り切れていたら、あきらめよう。運転すること20分。一番好きなキャラクターのポーチがありました。巾着やキーホルダー、Tシャツ、靴下も!

 期待以上の成果が得られたことに満足しながら、戦利品を写真に撮って送ると、大喜びの返信がすぐにありました。甘いな、親バカだな、と呆(あき)れつつ、きっと、これもあと数年のことだろうと、「しまパト」を楽しみたいと思います。=朝日新聞2021年3月17日掲載