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仕事と人間関係の大事で難しい部分描いた「褒めるひと 褒められるひと」

 人をほめるのは難しい。タイミングや言い方を間違うとわざとらしくなってしまう。逆に、ほめられたらほめられたでリアクションに困ることもある。そんな難題に敢然と挑んだのが本作だ。

 玩具会社の総務部に勤める市川詠子はヘコんでいた。きちんと仕事をしていても評価されず、たまのミスを部長に責められる。思わず「褒められたい」とつぶやく詠子。その独り言を耳にした直属の上司・坂東は、彼女をほめるキャンペーンを開始する。

 自分のことを見てくれている人がいたことに感涙する詠子。実際、坂東は彼女をほめまくる。が、問題はそのほめ方が独特すぎることだった。笑顔を「目がゾウみたいですごくいいよ」、そつない仕事ぶりを「忍者的」「孫の手」「凄腕(すごうで)のおばあちゃん」「回らないお寿司屋(すしや)さん」……って、それ本当にほめ言葉!?

 微妙な比喩を無邪気に繰り出す坂東にまず笑う。詠子の喜怒哀楽の多彩な表情にもグッとくる。アネゴ肌の同僚、一見チャラい新人もいいキャラだ。ライトなコメディーのようで仕事と人間関係の大事な部分が浮き彫りになる。どんな形でも、ほめられればやはり人はうれしいもの。自分も臆せずほめていきたい。=朝日新聞2021年6月5日掲載