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内田良『部活動の社会学 学校の文化・教師の働き方』 制度及ばぬ部活、魅力が過熱に

 夏の甲子園が2年ぶりに開幕し、今まさに高校球児が「部活動」の成果を競っている。生徒や教員に絶大な影響を与える部活動の実態を「見える化」しようというのが、『部活動の社会学 学校の文化・教師の働き方』だ。編者は、組み体操事故や2分の1成人式などの学校問題を指摘してきた内田良・名古屋大学准教授。4人の若手研究者とともに、22都道府県の中学教職員に行った質問調査(2017年実施)の回答約4千人分をもとに分析考察した。

 個人的な体験で語られがちな部活動だが、本書によって様々なことが客観的にわかった。例えば、教員の立会時間は、運動部顧問、保護者の期待、楽しさ、の3要素で長くなること。小学生から経験している部員の割合が高い競技ほど、練習時間が長いこと。野球、サッカーは最たるものだ。

 部活動は制度上は教育課程外の「やってもやらなくてもいい活動」。制度の手が及ばないことで魅力が過熱に転じ、課題が積み重なっているとの指摘に深くうなずいた。(久田貴志子)=朝日新聞2021年8月21日掲載