「パパはゲーム実況者」で知る、ゲーム実況者のお仕事 楽しさの一方、孤独の苦しみも

野球や競馬などのスポーツ以外にも、「ゲーム」の実況を仕事としている人たちがいることを知っていますか? 『パパはゲーム実況者 ガッチマンの愉快で平穏な日々』(KADOKAWA)は、著者のトラちんさんが、ゲーム実況者である夫の「ガッチマン」さんの仕事や日常生活を、家族の視点からコメディタッチに描いたエッセー。高校生を中心に人気の職業ですが、一方で大変さや舞台裏が語られることは少なく、ベールに包まれたゲーム実況者の本当の姿をあぶり出しています。
ゲーム実況とは、新作ゲームがリリースされた時に、メーカーの広報とアピールしたい点などを打ち合わせてPR動画を作ったり、動画サイトで生放送番組の司会をしたりする仕事です。ガッチマンさんは、PCやマイク、カメラなど機材の設定、収録の段取りも自身で手がけ、動画を配信しています。生放送でゲストがいる場合は、会話の受け答えをしつつ、カンペの指示に従い、進行のタイミングや時間配分を意識するなどプロデューサーさながらの働きもします。しかしマルチタスクをこなすため、失敗することも。機材の接続が悪く音が出ないなど、放送中のトラブルには軽快なトークで場をつないで乗り切ります。
自身もプレイヤーとして、一人二役で実況をこなすのがゲーム実況のスタイル。時にゲームやストーリーに集中しすぎて言葉が出てこなかったり、体感ゲームでは息切れしてしまったりすることもありますが、それさえも視聴者に緊迫感や臨場感を伝える個性になります。ホラー系のゲーム実況を得意とするガッチマンさんのプレイ中には、「こわい~」「ドキドキする」「次が楽しみ♪」など視聴者からのコメントがリアルタイムで流れてきます。ベテランからゲームに馴染みのない初心者まで、どちらも楽しませるのが腕の見せどころ。視聴者がゲーム内容を熟知している場合は実況者の反応を、知らない場合は一緒になって驚きや感動を伝えます。
しかし過去には、妻のトラちんさんに「ゲームばかりしていて!」と注意されてしまったことがあるそう。というのもガッチマンさんが本格的にこの仕事を始めたころ、ゲーム実況者はそれほど認識されていなかったから。今では家族の理解や協力を得て、ガッチマンさんが趣味のゲームをやっていると、娘の茜さんから「パパ、お仕事のゲームしなさい」と言われるなんてこともあるそうです。
ひたすらプレイし続けるのは、ゲームを知り尽くし、見どころや攻略のポイント、楽しみ方をつかむため。放送や動画配信などの華やかさをA面とするならば、ひたすらゲームと向き合う孤独の苦しさがB面です。ゲームの難易度が高くなると運にも左右され、クリアできても1カ月間、夢でうなされるという過酷な体験もしてきたこともつづられています。自らが一番のファンでありながら、ゲームの説明書さながらの責任も担っているのです。