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「二重に差別される女たち」書評 本気ではない連帯を喝破

評者: 温又柔 / 朝⽇新聞掲載:2021年11月13日
二重に差別される女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム 著者:川村まゆみ 出版社:DU BOOKS ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784866471501
発売⽇: 2021/08/27
サイズ: 19cm/333p

「二重に差別される女たち」 [著]ミッキ・ケンダル

 私はアライでいたい。アライとは、マイノリティを理解、援護する人のこと。
 「健康、富、成功する機会」が一部の者のみが持てる「特権」であってはならないと考え、そのために行動すれば、アライへの第一歩は踏み出せる。
 ただし、「よきアライになるかどうかを決めるのは、特権を持つ外部者ではない。特に、彼女たちがアライという地位を利用して、自ら援護していると主張するグループの誰かの気分を害している場合は」。
 貴女(あなた)方は私たちと本気で連帯したいのではない、黒人に寄り添う自らに酔っているだけだ、と喝破するケンダルの言葉の宛先は、むろん白人のフェミニストたちである。
 しかし支援や援護の対象であるマイノリティに異議を唱えられてたじろぎ、善意を踏み躙(にじ)られたと逆上する人はこの日本にもいる。
 アライを志願する私たちは覚えておかなければならない。救世主でいたがる態度もまた、差別の一つなのだ。