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荒木健太郎「空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑」 雲はみそ汁のモワモワ現象

 朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」の影響か、あるいは度重なる異常気象への備えなのか、このところ天気や気象への関心が高まっている気がする。かくいう自分も天気予報をよく見るようになった。

 もちろん明日の天気を知るためでもあるけれど、私の場合は、癒やされるために見ているふしがなくもない。殺伐としたニュースのあとに流れる、そこだけは穏やかな時間。穏やかでないときもたまにあるが、出かける予定もないのにスマホで雨雲レーダーを見たりして、騒がしいネットやテレビの世界から束(つか)の間われに返るのである。

 動機はなんであれ、少しだけ天気や気象に関心を持ったとき、この『すごすぎる天気の図鑑』はちょうどいい本だ。雲が動物に見える現象には名前があるという話から始まり、雲はみそ汁のなかのみそがモワモワ動いているのと同じ現象、雨つぶの頭はとがってない、花粉で空が虹色になる、1時間に100ミリの雨の重さを力士で換算といった興味を惹(ひ)く話題がちりばめられ、なんだろう、と読む気にさせる。私もかねがね、みそ汁に沈んだみそをお箸で突いてモワモワさせると、雲みたいだなと感じていた。ラーメンやお茶の湯気も実は雲なのだそうだ。

 各ページの下に小さく書かれた豆知識も面白い。上昇気流でパラシュートを開けば空に昇れるかとか、南極では息が白くならないこととか、さりげなく好奇心を刺激してくる。

 もちろん100種類以上もある雲の分類や、近頃よく耳にするようになった線状降水帯の話、温帯低気圧になってさらに発達する台風もあることなど、専門的な知識もしっかり書かれている。気象や天気に関する図鑑はこれまでにもあったはずだが、小ネタや切り口で飽きさせない作りに構成の妙を感じた。

 ただそうした利点は踏まえつつも、私が思うのは、天気予報は今、現代人にとって心のオアシスになっているのではないかということなのだった。=朝日新聞2021年11月13日掲載

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 KADOKAWA・1375円=13刷20万部。4月刊。小学校高学年以上を中心に幅広い世代に人気で、「親子で読んだり、孫にプレゼントしたりという声も多いです」と担当者。