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話題作から解き明かす『それでも映画は「格差」を描く』など注目の新書5選

「それでも映画は「格差」を描く」

 経済格差と貧困が、先進国も例外なく世界を覆い、労働者を搾取する現代。コロナ禍が拍車をかけるこのディストピア的状況を、映画はどう描いているのか。「パラサイト」や「万引き家族」、「ノマドランド」など話題作から映画評論家が解き明かす。
★町山智浩著 インターナショナル新書・990円

「まんが訳 稲生物怪(いのうもののけ)録」

 国際日本文化研究センター所蔵の絵巻物の「まんが訳」第2弾。江戸時代、今の広島県三次市の武家屋敷に夜な夜なお化けが現れたが、16歳の稲生平太郎は少しも動ぜず……というおなじみの怪談が、絵巻物を使った「切断」と「編集」の妙でよみがえる。
★大塚英志監修、山本忠宏編 ちくま新書・1078円

「山小屋クライシス」

 コロナ禍により山小屋の経営は大きな打撃を受け、多くが存続を危ぶまれている。登山道の整備やトイレの提供、人命救助など山小屋が担ってきた公共的な役割は今後どうなるのか。北アルプスの山小屋主人ら現場を支える人に聞き、国立公園が抱える構造的問題を明らかにする。
★吉田智彦著 ヤマケイ新書・990円

「山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る」

 ノーベル賞科学者の山中氏と、小児脳科学者で発達障害の子の家族を支援する「子育て科学アクシス」代表の成田氏は、神戸大医学部時代の同級生。自身の幼少期の体験や葛藤も交え、ピンチを乗り越える力、「助けて」と言える力の重要性を語り合う。
★山中伸弥、成田奈緒子著 講談社+α新書・990円

「楽しい孤独」

 生涯で2万句も詠んだ小林一茶が、最期を飾る辞世の句を残さなかったのはなぜかを俳人の筆者が探る。そこには、晩年、逆境に遭い孤独でありながらも、明るくどこか自虐的に生に執着する往生際の悪さを詠み続け、与えられた命を精いっぱい生きた一茶の姿が見えてくる。
★大谷弘至著 中公新書ラクレ・990円=朝日新聞2021年11月20日掲載