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大人が読んでも「ドキッ」とする 人間の本質を問いかける絵本5選

二見正直さんの絵本「もっとおおきな たいほうを」

『もっとおおきな たいほうを』(福音館書店)より

 先祖代々伝わる立派な大砲を持っているのに、戦争がなく、使うことができない王様。ある日、領地の川でキツネが勝手に魚をとっていると聞き、大砲をドカン。ところが、キツネは王様より大きな大砲を持ってきて……。二見正直さんの『もっとおおきな たいほうを』(福音館書店)は、「より大きな大砲を!」「大きさで負けるなら数で!」という王様とキツネの競い合いが楽しく読める一方、エスカレートしていくことの恐ろしさを感じる作品です。「戦争や企業競争など、いろんな意味で愚かなところをあぶりだしてやろう、そんな想いを込めた作品です」と二見さんは話します。

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ノリタケ・ユキコさんの絵本「楽園のむこうがわ」

『楽園のむこうがわ』(あすなろ書房)より。繊細に描き込まれた美しい情景は、何度開いても発見があって楽しい

 フランス・パリを拠点に活動するアーティスト、ノリタケ・ユキコさんの絵本『楽園のむこうがわ』(あすなろ書房)は、左右ページでそれぞれパラレルに展開する絵本。森へやってきた2人の少年が、それぞれのやり方で「楽園」を築いていく様子が描かれます。黒い髪の少年は、森に調和した小さな家を作り、金髪の少年はプール付きの都会的な家を建てます。豊かさとは何かを、思わず考えさせられる作品です。

>ノリタケ・ユキコさんのインタビューはこちら

谷川俊太郎さん、中山信一さんの絵本「うそ」

『うそ』(主婦の友社)より

 詩人の谷川俊太郎さんが1988年に発表した「うそ」が2021年4月1日、エイプリールフールに絵本『うそ』(主婦の友社)として発売されました。絵を担当したのはイラストレーターの中山信一さん。少年が犬の散歩に行くという何気ない日常の中で、「うそをつく」ことへの葛藤や哲学が書かれた詩を初めて読んだとき、「心をえぐられるような感覚を覚えた」と中山さんは話します。「うそが正しくないとか悪いという考えはなくて、自分が信じられる視点や正解を持てれば、それでいいのではと感じます。それがたとえ周りと違ったり、『うそだ』と言われたとしても、自分が自分を信じてあげられる価値観が大事なのかなと思っています」

>中山さんのインタビュー全文はこちら(谷川さんのコメントも)

林木林さんの絵本「二番目の悪者」

『二番目の悪者』(小さい書房)より

 金のライオンが悪意ある噂話を流して、皆から信用されていた銀のライオンを追いやっていく『二番目の悪者』(小さい書房)。噂を広げていく仲間の動物たちは、心配性だったりおせっかいだったりするだけで、悪意はありません。「何が本当で何が嘘なのか、自分の目で確かめようとする意識は大切ですよね」と林さん。有名な人が言っていたから、友達が話していたから、ネットで話題になっていたから――。噂がひとり歩きして誰かを傷つけるニュースが多い今、読みたい絵本です。

>林木林さんのインタビュー全文はこちら

新井洋行さんの絵本「かいじゅうたちは こうやってピンチをのりきった」

「かいじゅうとドクターと取り組む 1 不安・こわい気持ち」として出版された本作。新井さんの頭の中ではすでに続編ができあがっているという。『かいじゅうたちは こうやってピンチをのりきった』(パイ インターナショナル)より

 0~2歳児向けのシンプルな絵本や、おもちゃ感覚で楽しめる絵本を数多く手がけてきた新井さんの新作『かいじゅうたちは こうやってピンチをのりきった』(パイ インターナショナル)は、メンタルヘルスがテーマ。不安や恐怖を感じたときに生まれる「ゾワゾワちゃん」とどう付き合えば穏やかに過ごせるか、かいじゅうたちが教えてくれます。「大人になると、不安や恐怖を感じても、なかなか相談できないじゃないですか。自分の弱みを打ち明けるみたいで抵抗があるでしょうし、そもそも自分でも認めたくなかったりしますよね。でもこの絵本をきっかけに、もっとオープンに話せるようになってほしい」と新井さんは話します。

>新井洋行さんのインタビュー全文はこちら