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「過疎再生」 足元の宝を見つけて、地域の魅力発信

 少子化が大問題の日本で、人口わずか400人ながらベビーラッシュに沸いている町がある。島根県大田(おおだ)市大森町、通称「石見(いわみ)銀山の町」だ。著者はこの町出身の夫と服飾ブランドを立ち上げ、古民家を再生して店舗や社員寮にし、古民家の宿も営んできた。

 40年前に移り住んだ当時は人影まばらな山間の町。だが、何もないように見えたこの場所には、温かな人づき合いや豊かな自然や歴史があった。その価値に気づかせてくれたのは、町の外にいる人たちだ。以来、足元の宝を見つけながらビジネスを楽しみ、地域の魅力を発信してきたという。

 都会と同じ土俵に上がれば負ける。そのため大量生産には背を向け、手仕事中心のモノづくりを行ってきた。美しい町と生活文化を大切にする企業理念に賛同し、移住して来る若い社員も増えている。ある人は「東京では働くために暮らしていたけれど、ここでは暮らすために働く」と語ったそう。人間らしい幸せな暮らしができれば出生数は増える。なんと羨(うらや)ましい環境か。

 次の世代へバトンを繫(つな)ごうとしている今、自然や経済、生活すべての「美しい循環」を目指したいと著者は言う。小さな町だからこそ追求できる理想郷が、ここにある。=朝日新聞2021年12月4日掲載