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地味だけど心に残る、君嶋彼方さん一押しのドラマ「すいか」

シナリオ集が文庫で発売されている

 今でこそ映画や小説や、いろんな娯楽媒体に触れているが、学生時代はテレビドラマばかり見ていた。夜九時からはテレビにかじりつく毎日で、クールが始まるたび全ドラマの第一話をチェックしていた。当時は裏録なんていう便利なものはなかったので、ドラマを見ながら裏被りしている別のドラマをVHSで録画していた。中学から大学にかけて、ブログでドラマの感想を書くなんてことまでしていた。

 それほどのドラマオタクだったので、好きなドラマは? と訊かれるといくつも挙げたくなって困ってしまう。それでも一番印象に残っている作品がある。二〇〇三年に日本テレビで放送されていた「すいか」というドラマだ。

 携わっていた人には申し訳ないが、はっきり言って地味なドラマである。土曜日午後九時という時間帯にもかかわらず、テーマは「独身の三十代女性が自分を見つめ直す」というものだし、さしたる展開があるわけでもない。キャストも、小林聡美、ともさかりえ、市川実日子、浅丘ルリ子……全員素晴らしい役者で自分も大好きだが、果たして土曜の夜に家族でこのドラマを見よう! となるのか? と言われてしまうと、まぁ否だろう。

 結果、視聴率は振るうことなく終わってしまった。だがしかし、このドラマ、もうめちゃくちゃに面白いのである。大傑作なのである。その証拠に「すいか」は数々の賞を受賞し、なんと「向田邦子賞」までかっさらっていったのだ。それを聞いたときは内心ほくそ笑んだものである。やっと良さに気付いたか、世間よ。

 とはいえ、このドラマの魅力を伝えるのはなかなか難しい。醸し出す空気感や絶妙なおかしさ、心に響く台詞の数々は、やはり実際に見てもらわないと味わえないものだと思うからだ。

 ちなみにあらすじはこんな感じだ。「三十四歳独身の主人公(小林聡美)が、ハピネス三茶という下宿先で同居人たちと触れ合っていくうち、だんだんと変化していく」。これだけ読んで「あぁ、そういう系ね」と思った方。何度も言うようだが、とりあえずまずは、見てくれ。

 このドラマはリアルタイムで見ていたので、自分はまだ十四歳、確か中学二年生のころだった。その年齢でこのドラマの良さをすべて理解できていたとは正直言い難いが、それでも「すいか」に大きく影響を受けているのは間違いない。このドラマは実は非常に文学的な面も持ち合わせていて、小説を書くという行為の原動力にもなったと思う。

 今はドラマをあまり見なくなってしまった。社会人になって忙しくなったから、というのもあるが、毎週毎週ドラマを見続ける体力がなくなった、というのが正直なところではある。

 それでもたまに、無性にドラマが見たくなるときがある。特に「すいか」は、うだるような暑さの夏の中、クーラーの効いた部屋でまったりと見るのには最高のドラマだ。今年の夏は、久々に見返してみようかな、とこれを書きながら既に思いを馳せている。