未来にどんな価値観が常識になるか。明確なビジョンを持って固定観念を破り、社会を動かした人を私たちは偉人と呼ぶのだろう。
ルース・B・ギンズバーグ(1933~2020)がそうだ。『ルース・B・ギンズバーグ名言集』(岡本早織訳)は、米国史上2人目の女性連邦最高裁判事として女性やマイノリティーの平等のために尽くした彼女の人生と哲学がコンパクトにまとまっている。
法曹界にまだ女性が少なかった時代、自身も様々な性差別に遭いながらも、彼女の知性にほれ込んだ夫の支援もあり、キャリアを積んでいくギンズバーグ。弁護士として五つの性差別訴訟で最高裁での勝訴をかちとる。
最高裁判事として思い通りの判決が出なかったときにも、前を向いた。未来に望みを託して書いた「反対意見」は、若者の間で話題になり、出身地が同じラッパーのノトーリアスB.I.Gにちなんだ「悪名高い(ノトーリアス)RBG」の異名で一躍ポップアイコンになった。映画「RBG 最強の85才」も合わせてお薦めしたい。(板垣麻衣子)=朝日新聞2021年12月18日掲載