「家電批評」はその名の通り、家電製品を実名を挙げて批評しまくる消費者目線の記事で有名だ。
かつて雑誌「暮しの手帖」の名物企画だった商品テスト、すなわちメーカーへの忖度(そんたく)一切なしに実際に使ってみてその性能や使い勝手を批評するスタイルを、いつしか本家のほうはやらなくなったが、本誌がつないだ形だ。発行元の晋遊舎は、家電以外にもモノ全般を批評する「MONOQLO」、女性が気になる商品を批評する「LDK」などを手がけ、どれも一度開いたらつい読みふけってしまう麻薬的な魅力がある。批評誌としての立場上、広告をとらないのは当然とはいえ、それで採算が成り立っているのだから雑誌自体が売れているのだろう。
年末特大号の「2021家電オブ・ザ・イヤー」特集を買って読んでみた。さまざまなジャンルのイチ推し商品が載っているだけでなく、「期待はずれオブ・ザ・イヤー」も選ばれ、表紙に“iPhone 13は買わなくて良い”と堂々と書いてあったのには、その正直さに笑ってしまった。さらにAmazonで高評価の家電をあらためて試し、評価通りか検証するサクラレビュー対策のページには“実用的なものはほぼありませんでした”“ソーラーパネルはただの飾りでした”って辛辣(しんらつ)な評が並んでいる。
連載も面白くて、アラフィフ・独身・ビンボーの漫画家による商品のお試し企画は「自腹で買う!」「いつか買うかも」「くれるならもらう」「もう使わないだろう」「メンドくさい」「ノーコメント」の6段階採点でバッサリ切る。開発者はきっと陰で泣いているだろう。だが、今どきそのぐらいでへこんでいては、商品作りなどできないのである。本だって映画だってレストランだってすぐに★をつけられて、酷評される。家電も同じなのだ。
秀逸だと思ったのが、認知症の母親の介護に家電で挑む連載「ウチのおかんがボケちゃいまして」。本号では見守りGPSを取り上げている。たしかに家電のサポートがあるとなしでは介護の質も大きく変わるはず。私の母もずいぶん耳が遠くなってしまって悩ましい(補聴器をつけてくれない)ので、この連載、まとめて読みたくなった。いくつかの問題を画期的な新商品が解決してくれるかも。同様に子育て応援企画があってもよさそう。
最新号はiPadと旅の道具特集。旅の道具にはそそられるが、次々登場する新製品に気持ちがのみ込まれそう。読む前に、まず自分の生き方を考える必要がある気がした。=朝日新聞2022年1月12日掲載