「少女たちの戦争」書評 27人の体験から浮かぶ「あの時代」
評者: 宮地ゆう
/ 朝⽇新聞掲載:2022年01月22日
少女たちの戦争
著者:中央公論新社
出版社:中央公論新社
ジャンル:ノンフィクション・ルポルタージュ
ISBN: 9784120054761
発売⽇: 2021/11/09
サイズ: 19cm/219p
「少女たちの戦争」 [編]中央公論新社
太平洋戦争開戦時に20歳未満だった27人の女性たちが、戦中やその前後について書いたエッセーをまとめたもので、企画が素晴らしい。開戦時3歳だった佐野洋子から19歳だった瀬戸内寂聴まで、暮らした場所も境遇もさまざまだが、それぞれの体験が少しずつ重なり合うことで、「あの時代」が浮かび上がる。
男たちの戦場体験と違い、彼女たちの戦争は、日常生活の延長線上にあった。
軍需工場で人間魚雷の羅針儀を作らされた津村節子、特攻機の部品をあてがわれた新川和江は、戦後も自分たちが作ったもので自爆した若者たちのことを考えた。黒柳徹子は、配られるスルメ目当てに兵隊さんの見送りに通った自分もまた戦争の加担者だったのだと、何年も苦しんだ。
本当のことを言わない大人たちや、あっという間に変質する社会を静かに見つめる視線は鋭い。のちにそれぞれの時代の書き手となる彼女たちの作品が、また少し違って見えてくる。