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「戦争論」書評 歴史をたどり縦横無尽に

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2022年01月22日
戦争論 私たちにとって戦いとは 著者:マーガレット・マクミラン 出版社:えにし書房 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784867221044
発売⽇: 2021/10/31
サイズ: 19cm/363p 図版16p

「戦争論」 [著]マーガレット・マクミラン

 人類史から戦争の記録が消える時はあるのか、といった関心で読み進むと、いささか絶望的な気持ちになる。著者は高名な歴史学者だが、人類の戦争の歴史をたどり、その原因、種類、兵士、さらには芸術作品に描かれる戦争模様を縦横無尽に論じる。日本軍兵士の手記を引用し、日本人の知的な戦争観も紹介している。
 ホッブズのいう「些細(ささい)なこと」で人間は戦争を始めることがあるといい、アレクサンダー大王の例を引きながら論じる。18世紀、ヨーロッパは数多くの戦争を体験したが、前の世紀の戦争と比べると制御不能に陥らなかったという。また、第2次世界大戦中の調査によれば、敵に発砲する覚悟がある兵士はわずか15~25%であった。その比重を高める軍事訓練への関心が高まったと指摘している。
 著者の結論は、科学技術が進歩し、戦争による人類消滅の危機に直面しているとの警告にある。戦争を批判する論理とシステムの構築を、より急がなければならない。