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BL担当書店員が選ぶ「笑って開運招福!笑えるBL」

ツッコんだら負け!? キャラクターたちの振り切れ方がスゴイ!(井上將利)

 2022年! 今年はどんなBL作品と出会えるのか、楽しみな一年が始まりました!

 さて、そんな今年の最初のテーマは「笑えるBL」ということで、皆様に笑いと感動をお届けするべく選んだ作品は、虫歯さんの「不死身の命日」(ホーム社/集英社)です。

 本作に登場する三角冬真(みかど とうま)は超有名企業の御曹司であり、容姿端麗&頭脳明晰な自他共に認める超スーパーエリート。唯一の悩みは自分に見合った伴侶がなかなか見つからないことくらいで何不自由ない生活を謳歌していました。そんなある日、街中で暴漢に襲われたところに突然現れ冬真を助けた謎の青年フジミとの出会いが訪れます。優しそうでほわ~んとした印象のフジミは「趣味で人助けしたまで」とその場を去ろうとしますが、そこは冬真のプライドが許しません。「借りを返す!」と言って強引にフジミを高級レストランのディナーに連れて行くのでした……。本作では、プライドの塊のような冬真がこれまで関わったことのない、どこか掴み所のないフジミに対して困惑しながらも興味を抱いていき、2人の関りが深まっていくのですが、その過程はとにかくツッコミどころ満載。最終的にはツッコんだら負けかな?と思うくらい思わず笑ってしまうシーンがたくさん登場します!

 まずはフジミと出会ったその日のディナーにて、レストランのある高層ビルで火災が発生。フジミが「おれ体丈夫なんで」と言い、冬真を抱えて飛び降りるシーンがこちら。

虫歯「不死身の命日」より ©虫歯/ホーム社

 何階から飛んだのよ!?っていう(笑)。

 ちなみに冬真が絶叫している「サザンオおあああ」は飛び降りる直前、フジミに好きな歌手を聞かれた際の答えです(笑)。

 そんな奇想天外なフジミに振り回されながら常に芸人顔負けの全力ツッコミで応える冬真も笑えます。さらに冬真がフジミとの関係を進め夜の営みに挑もうとする場面では、主導権を握るための作戦を冷静且つ緻密に考えちゃう、振り切ったキャラクター性も見せてくれます。

 冬真とフジミの掛け合いに「どうしてそうなった!?」と終始楽しませてくれる本作は、休む間もなく最後まで走り抜けてしまうような疾走感があると同時に、気付けば最後は感動しているという不思議な2人の魅力が詰まっています! 是非、楽しんでいただけたら幸いです!

「ファイ!!」「オ~」で意思疎通できる2人に爆笑!(原周平)

 2022年もあっという間に1ヶ月経ってしまいました……! まだまだ大変な世の中が続きそうですが、楽しいことを楽しみながら過ごしたいですね! 今回は、ちょっともやもやしたとき、読んで笑ってすっきりできちゃう、そんな1冊をご紹介します♪

 プルガリアさん「ザ・ゴールデン・モーニンググロー・ロード」(笠倉出版社)です。

 お付き合いをしている江波くんと太郎くんカップル。江波の誕生日をお祝いしようと欲しいものを聞いてみたら、江波から返ってきた提案は「一緒にはしごラブホしよ」で!? はしご酒のごとく、各ホテルの特色を2時間で楽しみながらHしてゴールを目指す、という確かに面白そうな内容です(笑)。

 真っ昼間から始めて6軒のホテルを1日で回るという結構ハードなこの企画、ひとり遊びが好きな江波が誘ってくれた、という単純な理由で太郎は即OKしちゃいます。まずこのカップルの、なんかゆるくてお互い好きが溢れている雰囲気がめっちゃ可愛いんですよね……(ため息)。

 そんなこんなで1軒目、ホテル「コアラ」にて早速1戦目! 声を出すことを恥ずかしがる太郎を江波が「どんどん声出そう!」と応援する……と、元高校球児の太郎は部活のような声出しならできると、「ファイ!!」とひと声。それに応えるように江波も「オ〜」と声を出していきます。

 こんなノリのいいカップルが今までいたでしょうか(笑)。というか「ファイ!!」「オ~」の掛け声だけで意思疎通できちゃっていて……思わず吹き出しちゃいます。こんなテンションで続く作品ですが、ギャグ要素を盛り込み笑わせていきながらも、通じ合っている2人だからこそのやり取りや空気感が伝わってきて、しっかりLOVEも味わえるところが本作の素晴らしいポイントです。江波の笑顔にいちいちキュンキュンしている太郎が可愛すぎるので注目してください(笑)。

 詳しく触れてしまうとネタバレになってしまうので控えますが、攻略する各ホテルでは単にHをするだけじゃなく、それぞれクセのあるエピソードも。「アルタイル」ではコスプレ(女装)&おとなりでハプニング、「わ~ぷ」ではスッポン鍋、「BALIRIN」では初めてのケンカ、最後の「朝焼け」では初心に帰ってと、読者を飽きさせません! なんだかんだで意外と純愛なストーリーで、ひたすら微笑ましい2人を堪能しちゃいました。巻末で描かれる、付き合う前のお話もとにかくかわい~って、にやにやでした。

 同時収録の短編、「24時間挿れっぱなしプラクティス」もタイトルまんまのおバカ作品です(良い意味で)。1カ月のタイ出張が決まった東雲が、恋人・宇佐見とHができないさびしさを埋めるべく、24時間挿れ続ける!という(笑)。

 2組とも、お互いに大好きだからこんなアホくさいことも一緒にできるんだよな、と極上のバカップルっぷりに羨ましささえ覚えちゃいます。文章で書くとHばっかりしている作品に見えてしまうかもしれませんが、好き合う2人の日常の中のちょっと特別な1ページを覗き見しちゃった、って感覚で楽しめますよ♪ プルガリアさんの和む絵柄も、思わず笑っちゃうお話にぴったりで、今日はシリアスな作品を読む気分じゃないな……というときに、ふと読み返したくなる作品。何も考えずに笑いたいとき、激推しの一冊です!